
日本勢活躍!「ワールドトライアスロン パラシリーズ横浜2025」
5月17日、「ワールドトライアスロン パラシリーズ横浜2025」が、山下公園周辺の特設会場で開催された。東京2020パラリンピック、パリ2024パラリンピックのメダリストなど、トップ選手が世界から集結するパラトライアスロン恒例の国際大会だ。
パラトライアスロンは、スイム750m、バイク21.226km(横浜大会では、4.245km×5周)、ラン5km(横浜大会では、車いすクラスのみ2.5km×2周、それ以外のクラスは1.67km×3周)で競われる。トランジションと呼ばれる、各パートの切り替えをどれだけ短時間で行えるか、それぞれの持ち味の種目をどう活かすかが、勝負のカギとなる。
当日は、気象情報通り、前日未明からの雨が降っていた。6時50分のスタート時、気温、水温ともに20度。幸い、風は強くない。気持ちのいい晴天ではないことを、逆にチャンスととらえる選手が多いのは、パラトライアスロンに出場する選手の特徴でもある。シーズン初めで自国開催となる日本人選手の活躍を楽しみに、早朝から観客も集まっていた。
パリパラリンピック以降、パラトライアスロン日本代表のヘッドコーチに福井英郎氏が就任。福井HCは2000年シドニーオリンピックに出場した経験を持つ。新体制でスタートした中での横浜大会である。
シーズン序盤となる自国開催で、日本人選手が活躍した。
PTS2女子では、秦由加子が2位、パラ陸上競技から転向してきた保田明日美が3位。PTS4女子では、谷真海が3位。

男子では、PTWC(車いす)で木村潤平が3位、PTS2で中山賢史朗が6位。視覚障害の男子PTVIでは、樫木亮太(ガイド:水野泉之介)が5位、山田陽介(ガイド:寺澤光介)が6位。もっとも出場人数の多いPTS5男子(全12名)では、佐藤圭一が10位、安藤匠海が11位、パラ陸上競技でも活躍経験のある永田務はスイムから上がったところで途中棄権した。同じく出場人数が10名のPTS4男子では、東京パラリンピックで銀メダルを獲得している宇田秀生が5位、金子慶也が6位に入った。

昨年、パリパラリンピック直前の練習中に落車事故で右肘骨折という大怪我を負った秦由加子は、今年1月に治療のためのワイヤーを抜く手術をし、2月に練習を再開させたという。秦はパラトライアスロンが正式競技となった2016年リオ大会からパラリンピックに出場しているベテラン。パラ陸上競技から転向してきた保田明日美の存在は大いに刺激になっていると語る。
「とくにランはとても参考になります。動画を撮影させてもらって、それを元に練習もしています」
同じ大腿義足のアスリートとして、走る義足についても情報を共有しているとか。今大会では、ランのラストラップで保田に捉えられたが、その直後のコーナーで保田が転倒し、それぞれ5位、6位となった。
その安田は、「雨天での練習はしていたが、こんな厳しい条件でのレースは初めて。ランパートの最後で秦さんの背中が見えて抜き去ったのは良かったけれども、もう、足がもつれてしまいました。やはり、経験の差がまだまだ大きい」と、振り返った。

新体制となったチームの力を今まで以上に感じていると語るのは、車いす(PTWC)男子の木村だ。
「世界のレベルがどんどん上がっている中、マシンの調整、とくにバイクの調整では専門のメカニックが細かく対応してくれる。ベストな調整を施したバイクに、エンジンとなる自分の体をいかにフィットさせ、スキル、フィジカルを向上させていくか。この両軸がないと、世界には勝てないが、シーズン序盤のレースですごく手応えを感じた」
雨の中、1着の選手が実はバイクでの周回ミスにより失格となった。
「沿道でのスタッフからの情報は入っていたが、諦めずに走ることで3位という結果を手に入れられた。今回はラッキーではあるが、新体制でのジャパンチームのメリットを、すごく感じられたレースでした」
と、新チームへの期待とともに、将来を見据えている。
オリンピアンである福井HCが率いるパラトライアスロンチーム。オリンピックとパラリンピック双方の日本代表チームが連携し、一つのジャパンチームとして機能させる方針だという。
「まずはスタッフ間の情報共有からスタートしました」
種目ごとの専門コーチなどの意見や分析を取り入れながら、オリ・パラの一体感を高めて、3年後のロス、7年後のブリスベンに向かっていく。
取材・文・写真/宮崎恵理