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  期待の選手が躍動!2025ジャパンパラ陸上競技大会

期待の選手が躍動!2025ジャパンパラ陸上競技大会

6月7日~8日、宮城県仙台市の「弘進ゴムアスリートパーク仙台」で、2025ジャパンパラ陸上競技大会が開催された。すでに九州では梅雨入りしていたが、仙台市は両日ともに晴天の夏日。気温、湿度の高いコンディションの中、328名の選手が躍動した。

今年は、9月にインド・ニューデリーでパラ陸上競技世界選手権が、11月には東京でデフリンピックが開催される。デフリンピック出場内定を決めた選手たちや、この大会でパラ陸上の世界選手権の派遣標準記録突破を目指す選手たちが集まった。

デフは世界トップレベルの短距離陣に注目!

デフ陸上短距離界の日本の第一人者・佐々木琢磨は、100m優勝、200m2位。400mリレーも含め、11月の東京デフリンピックでの三冠獲得が期待される

デフリンピックの陸上競技は、メダル獲得が期待される競技の一つ。前回大会100mで金メダルを獲得し大会2連覇を目指す佐々木琢磨は、メインである100m、200m、リレーに出場。個人種目としては100mで優勝、200mでは山田真樹に次いで2位となった。

聴覚障害・男子100mx4リレーの日本代表チームでは、昨年、41秒15で世界新記録を樹立している。リレーの世界記録は、1977年にアメリカが手動計測による41秒1以来、更新されていなかった。日本代表がマークした記録は電動計時によるもので、これが公式に聴覚障害の世界記録として認定されたということになる。

今大会、日本代表チームは、1走に坂田翔悟、2走に荒谷太智、3走に山田、アンカーに佐々木で、このメンバーは内定後に急遽決まった初顔合わせだった。42秒45の記録で、同じく聴覚障害の仙台大学チームを下した。

「デフリンピック初出場の荒谷が入り、ジャパンパラ会場に入ってから少し練習しただけでしたので、まずはしっかりバトンパスを成功させることをテーマに走りました」(佐々木)

「日本代表に選ばれて、初めて代表ユニフォームを着て出場しました。無事にバトンを渡すことができましたが、本番でも誇りを持って走りたい」(荒谷)

「高校時代からリレー経験がありますが、日本代表として走ることで自然とパワーがもらえました。11月のデフリンピック本番では、伝説のレースだったと言われるように。そのスタートが切れたかな、と思っています」(山田)

「日本代表ユニフォームを着用したことで、デフリンピックが開催されるということを、みなさんに知っていただけたかと思います。今後も、いろんな人に見てもらえるようにアピールしていきたいです」(坂田)

新人・荒谷は、佐々木が直接スカウトしたのだとか。

「ある合宿で、廊下を歩いているときに、何だかいい匂いがすると思ったら、荒谷がドミノピザを食べていた。それで声をかけて、一緒に練習するようになりました。声をかけて、本当に良かったです(笑)」(佐々木)

今後は、合宿でメンバー同士のバトンパスの精度を高め、11月のデフリンピック本番では「世界がまだ出していない40秒台、あるいは40秒を切る世界記録に挑戦したい」と意欲を見せた。

デフ女子400mリレー。日本代表チームの三走・今野桃果(右)からアンカー・生井澤彩瑛(中右)へのバトンリレー

一方、聴覚障害女子のリレーは、デフリンピックでは2016年に行われたブルガリアの世界選手権以来、9年ぶりの出場。今大会には、今野桃果、生井澤彩瑛、門脇翠、遠藤心音が出場し、51秒10でフィニッシュした。

期待の若手!短距離の吉田彩乃、やり投げの小松紗季

高校を卒業し、練習環境を変えたことで急成長を見せた、脳性まひ車いすクラスの吉田彩乃

パラ陸上では、昨年、パリパラリンピックに初出場した脳性まひクラス女子T34で100m、800mに出場した吉田彩乃が、活躍を見せた。同じクラスの小野寺萌恵が、どちらの種目でも日本記録を保持しているが、その小野寺を抑えて2種目とも優勝。レース展開で駆け引きも重要となる800mでは、レーン合流後に小野寺の後ろにピタリとつけた吉田が、最終周第3コーナーを回るあたりで小野寺を捉え、そのまま抜き去り2分16秒55の大会新記録でフィニッシュした。

「今年、高校卒業後の4月から岡山にあるワールドACの所属となり、練習環境がとても充実したことが、この結果に結びついています」

神奈川県横浜市出身で、高校時代までは母と2人で練習してきた吉田。そこから就職し、パラ陸上競技の日本代表選手が在籍するワールドACで、専門のスタッフやコーチによる指導が受けられるようになったことで急成長している。

「スタートも、持久力も上がってきましたし、使っているレーサーの調整などもしていただいています。それで自己ベストを大幅に更新することができました」

今は、小野寺の持つ日本記録を更新し、真の日本一になること、さらに数年かけて世界一を目指したいと語った。

”借り物”のやりと投てき台で世界選手権派遣標準記録を大幅に超える記録を出した、車いす女子F54クラスの小松沙季。パラカヌーから転向したばかりの選手だ

もう一人、今年華麗なデビューを飾ったのが、車いすのやり投げ女子F54クラスの小松沙季だ。もともとパラカヌー選手として活躍していたが、パラ陸上のやり投げに転向。今大会1投目でマークした16m99は、世界選手権派遣標準記録の15m04を大幅に超えるビッグスローだった。

「4月の日本選手権以降、スイングスピードの強化として1kgのメディシンボールを購入し、それを早く投げる練習をしてきたことが成果につながったのかな」

と、淡々と語る。まだまだパラ陸上を始めたばかりで、専用のやりも、投てき台も所有せず、大会が用意したものを使用して、この記録を出したのだった。

「やりも投てき台も、もっと自分のフォームやスタイルを見極めてから、しっかり選んで購入したいと思っています」

知的障害のやり投げ女子T20クラスで世界新記録を出した堀玲那

そのほか、知的障害のやり投げで女子T20クラスの堀玲那が42m17をマーク。これは日本新記録とともに、Virtus(国際知的障害者スポーツ連盟)公認の世界新記録だった。本人は、「パラ陸上T20クラスでの世界記録を目指したい」と、さらなる意欲を見せた。

取材・文/宮崎恵理 写真/吉村もと



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