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  ブラインドサッカーの醍醐味(その1)

ブラインドサッカーの醍醐味(その1)

ブラインドサッカーは格闘技そのものだ!

見ると、誰もが叫ぶ!「絶対見えてる!」

目が見えなくてサッカーができるはずがない! そんな思いは、一度ブラインドサッカー(以下ブラサカ)を見るとぶっ飛んでしまう。選手たちは手を引かれてピッチに登場したのに、ホイッスルが鳴った瞬間に自由に走り始め、パスをつないでいく。1㎝単位で距離を修正しながらダイヤモンド型フォーメーションを組み、ディフェンスする。時に激突し、身体とサイドフェンスを使った攻防を繰り広げる。そして敵陣に切り込み、豪快なシュートを放つ。そう、そこにはサッカーそのものがあるのだ。 誰もがまずは目を疑う。そして次にこう言う。「絶対見えてる! 見えてなきゃできない! できるはずがない!」 ブラサカは、2004年のアテネパラリンピックから正式競技となった。ピッチは20m×40mでフットサルコートと同じ広さ。両サイドには高さ約1mのサイドフェンスがあり、このフェンスにボールや身体が激しくぶつかる様は圧巻だ。ボールは転がると音の出る特殊な構造だが、その音は思いのほか小さく、雨や風が強ければ聞こえにくくなるし、飛行機やクルマの騒音で試合が中断されることもある。 サッカーとの大きな違いのひとつは、ボールを奪いに行く時に「ボイ(スペイン語で行くの意味)」と言わなければならないことで、言わないと「ノースピーク」というファールを取られる。選手同士の無用な衝突を避けるためだ。前後半のそれぞれでチームのファール数が6つ目から、第2PKが与えられる。通常のPKはゴールまでの距離が6mに対し、第2PKは8mとなる。 そしてゴールキーパーはゴールエリアから外に出てはいけない。シュートを止めるための「手」と「足」も白線から出るとファールを取られるなど、ブラサカならではのルールは多い。 チームは、4人のアイマスクをした全盲のフィールドプレーヤーと目の見えるゴールキーパー、相手のゴール裏にいて声で情報を伝えるガイド、そして監督で構成される。全盲なのにアイマスクをする理由は、選手のなかには光を感じる選手がいるので、公平にするためだ。ゴールキーパー、ガイド、監督は選手に声で情報を伝え指示を出す。 ルールを知り、見始めると、ほとんどの観戦初心者は決まってある種の違和感を感じ始める。それはサッカー会場にあるはずの「声援」がないからだ。ブラサカは音や声が重要なので、声援があるとそれらが聞こえなくなる。そのため、試合中は「黙って観戦する」ことが求められるからだ。つまらないと思うだろうか。だがその静寂は、ゴールが決まった瞬間に歓声となって爆発する。そしてその大歓声によって選手はゴールを「知り」、会場が一体となって喜びに酔いしれる。これこそがブラサカの醍醐味だ。  


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