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「ボッチャ、やりたい!」の気持ちにすぐに応えます! ―後編―

「ボッチャ、やりたい!」の気持ちにすぐに応えます! ―後編―

「ボッチャっておもしろい!」と思った感動をみんなに伝えていきたい (前編から続く) ――用具が高価で手が届きにくいなら安価なものを作って売ろうとされたように、体験会での指導でもとっつきにくさをなくそうとされているとうかがっています。 大澤 そうですね。ルールをあまり厳格に適用させようとすると敬遠されかねません。でも、多少ゆるくしても「ボッチャはボッチャ」で、ボッチャの楽しさは味わってもらえるんです。たとえばどちらが近いのかという距離の判定をする際に、時間をかけて器具を使って審判が図るのではなく、当事者同士で「談合」で決めてもらうと、和気あいあいとした雰囲気になったりします。上手な人と、そうでない人との対戦では「あなたうまいから、将棋の飛車角落ちのように、最初からボール2つ減らしておきましょう」といった提案をして、プレーしてもらったりもします。それでもやっぱり「ボッチャはボッチャ」で、私が初めてのときに感じたような感動的な気分を味わってもらえています。 ――初めての人たちが楽しんでいるようすが目に浮かびますね。 大澤 一緒にボッチャをすることで、人と人のつながりがうまれるということをいつも感じています。これはほんとうに、ボーダーレスでつながれるんです。それがボッチャの最大の魅力かな、と思っています。  先日、人と接することが苦手という方とプレーしたんです。でも、初対面でも「どう投げているんですか」と質問したら、「自分の場合は……」とすごく一生懸命にいろいろと解説してくれたんです。話をしているうちに打ち解けてきまして、「またやりたいね」という気持ちがいっぱいになりました。これは、私だけでなくお互いだったと確信しています。簡単には会えないわけですが、会えないなら会えないで「今頃、どうしているかな」と考えたりもするようになります。  それが、年齢や性別も関係なく、まさしくボーダーレスにどんな人とでも、初めて会った人どうしでもお互いを思いやれるようになれる。ボッチャって、人と人をつなぐ場を生み出す装置なんですよ。 ――そうした魅力のあるスポーツをもっと普及させたいという思いで、「一般社団法人レクレーションボッチャ協会」を設立されたわけですね。 大澤 はい、先ほど話した「草」ボッチャに相当するものを、レクレーションボッチャと命名し、ボッチャ全体の普及を目的に2023年2月に設立しました。会員には無料でなっていただけます。事業としては、会員となってくださった個人、チームやプレーヤーのマッチングのほか、用具のレンタルをして、ボッチャを始めてみたい方々のサポートをしています。  普及については、手で触れてボールの位置を確認することができる「ハンディボード」を開発し、視覚障がい者の方々がプレーしやすい状況を作っています。  そのほか、新しいボッチャの可能性を探る活動もしています。今考えているのは、バンケットボッチャ。バンケットは宴会、宴席の意味で、つまりみんなで楽しく飲んだり食べたりしながらプレーしましょう、というスタイルです。実際、これまでにスナックに用具を持ち込んでプレーしたりもしました。 普及活動を続けていくには、事業化してしっかりと収益を上げたり報酬を支払っていくことが大切と考えています。たとえば、指導など普及に協力してくださったスタッフがステアテックの用具を売ってくだされば、コミッションチャージをお支払いするといったことも考えています。 ――なるほど。それでは最後に、今後のビジョンを紹介してください。 大澤 まずボッチャを一般に普及させることが大事だと思っています。商品が売れなかった別の理由として、やはり「知名度がなく、市場が小さい」ことがあると考えています。私はこの素晴らしい種目をもっと広めたいのです。そして、多くの人がどこででもやっているような状況を作りたい。昭和の時代の草野球や、今でいえばストリートバスケ。年齢性別関係ないという点を考えれば、ブレイクダンスやゲートボールも近いかもしれません。とにかくボッチャが誰の日常にもあるような環境にしていくのが目標です。そして、いろいろな人が楽しめる競技であり、「いろいろな人」の中には障がいのある方々も当然含まれているのですから、「一緒にやりましょう」という流れにもっていきたいです。  それが共生社会だと思うんです。そういう状況をつくり出す場になり得ることが、ボッチャをはじめとしたパラスポーツと呼ばれる種目の醍醐味ではないでしょうか。「みんなが一緒に楽しんでつながれる」という特性を活かし、共生社会の実現へ向けて活動を続けていきたいと考えています。ボッチャをやりたい、イベントや大会をしたいというご希望があれば、どこへでも道具をもって出かけます。そして盛り上げます。ぜひ、お呼びください!  株式会社Nomearod、逆から読むとあの有名な何でも実現してくれるアニメのキャラクターになる。世の中にないものをポケットから取り出して、人生を楽しくしてくれる。大澤さんもまた、ボッチャをツールに、人々の人生を楽しくしようと、今日も飛び回っている。 大澤十三(おおさわ・じゅうぞう) 株式会社Nomearod 代表取締役/一般社団法人レクレーションボッチャ協会代表理事/練馬第一分区保護司。2012年区役所で開催されたニュースポーツの体験会でボッチャと出会い魅了される。普及には手頃な価格が必須であるとの理念に基づき、ステアテックボッチャのブランド名で自由な発想のボッチャ用具を企画販売している。依頼があれば東京から全国へ指導のため無料出張している。十三はビジネスネーム。ボール13個にちなんでいる。 ステアテック商品の一例。上/フルサイズコート(約10m×6m)税込19万8000円 下/ボッチャボールセット 税込4万7850円
「ボッチャ、やりたい!」の気持ちにすぐに応えます! ―前編―

「ボッチャ、やりたい!」の気持ちにすぐに応えます! ―前編―

草野球やストリートバスケのように、「日常にボッチャがある」という状況まで普及させたい! ボッチャの体験会を、爽やかな笑い声と褒め言葉を投げ掛けながら盛り上げている人物がいる。ボッチャ用品のステアテックを手がける会社の代表を務める大澤十三さんだ。普及のしやすさを追求し、レクレーションボッチャを考案し、ボッチャ用具の貸し出しも行って普及に努めている。ボッチャをやってみたいという声が届けば、「全国どこでも飛んでいきます」と、普及にかける思いは熱い! ※『パラスポーツマガジンvol.13』に掲載された記事です。 取材・文/長沢潤、編集部 写真/編集部、Nomearod  ボッチャ用具のブランドの一つ、ステアテックを扱っている株式会社Nomearod(ノメアロッド)は都心からほどない、私鉄沿線駅から数分にある。そこに突然4人の来客があった。ボッチャに興味を持った大学生が、用具を購入するため、住所を頼りに訪れたのだという。 ボッチャを通してのつながりから商品開発のアドバイスをたくさんもらえました(大澤さん)  「ここは事務所だけで、ショップ機能はないんだ」と同社の大澤十三代表が申し訳なさそうに答えた。しかしすかさず「せっかく来たんだから、やってかない?」と誘った。目の前の路地での〝ストリートボッチャ〞だ。商品は持って帰ってもらえないが、「ボッチャは楽しい」という思いは持ち帰ってもらいたかった。この狙いは、盛り上げ上手な大澤さんのホスピタリティによって完遂され、ボッチャの熱烈愛好家が4人誕生した。この4人は、数日後に大澤さんが依頼されていた小学校でのボッチャ体験会運営のサポート役にも加わったのだという。  この「輪の広げ方」で大澤さんとステアテックはボッチャの普及に取り組んでいる。 楽しい! 誰もがとりこになる魅力を伝えていきたい ――大澤さんのボッチャとの出会いは、いつ、どのようなものだったのですか? 大澤 私は大人になって水泳を始め、のめり込んで指導員の資格を取り、練馬区のスポーツ推進委員になって子供たちに水泳を教えたりマラソン大会の手伝いをしたりしていたんです。そして2013年頃に練馬区が主催したニュースポーツ体験会で初めてボッチャと出会い、すぐにとりこになったんです。うまくいかなくて、負けて、悔しくて、だから「またやりたい」と思った。心底、楽しかったんです。そして、そのとき私が味わった感動は、きっとこれから出会う人も同じように味わってもらえるはずだと確信したんです。この衝撃的な出会いを、多くの人に体験してもらいたいという思いはその時から今まで変わらず持ち続けています。 ――多くの人がボッチャと出会ってほしいという思いが、ボッチャ用品の販売につながっていったのですか? 大澤 初めて出会った体験会で自分が負けて悔しかったので、練習してチャレンジし直したいと思い、ボールを手に入れようと思ったんです。でも、当時は13個セットで9万円の商品があるだけでした。ジャックボールと赤青6個ずつのセットでしか販売されていなかったんです。「これでは、多くの人にやってもらいたい」のに広がっていかないと思い、「じゃあ、自分で作って売ろう」と考えたんです。元々福祉用品やレジャー用品の製造販売をしていたため、海外で安く作るためのコネクションもありました。商品開発は簡単ではなかったですが、なんとか2万円台で売り出すことができました。それが、ステアテックブランドの始まりになりました。 ――9万円が相場のところ、2万円なら一気に売れ筋商品になりそうですね。 大澤 いえいえ、なかなか売れませんでした。理由のひとつに、品質に対して疑問を持たれたからだと思います。それについては、横浜の特別支援学校の方々が企画したボッチャ大会で使ってくださったことがきっかけで、ボッチャをやっているいろいろな方々と知り合うことができ、そのつながりでアドバイスをいただきながら改良を重ねることができました。その結果、良い製品になってきたという手応えがあります。手ごろな価格にとどめるため、世界ボッチャスポーツ連盟の公式認定マークの認定を受けるのを控えていますが、重量275± 12グラム、円周270±8ミリなど規格や素材などは国際競技規則に準拠しています。ですから、日本選手権本大会や、強化指定選手選考会では使えませんが、それ以外のシーンでは使えるものですので、安心して購入いただければと思います。 ――ボールのほかに、コートも商品化されていますね。 大澤 はい。大会や体験会などの運営に関わる中で、一番大変なことは設営だなと感じ、もっと手軽に準備できるようにしないと普及しないなと思っていたんです。そして、これもかなりの試行錯誤の末に、いくつも社外秘の技術を採用して商品化しました。しかも、私たちからの提案として、3つのサイズを用意しています。実際の競技時で試用されるコートと同等のフルサイズコート。その半分のハーフコート、そしてさらに小さい約3×約1. 8メートルのカフェコートです。 より多くの人が手軽に始められる環境作りをしていく ――ステアテックの用具のお話を伺うと、競技ルールに縛られていないのだなと感じたのですが、どのようにお考えですか? 大澤 競技ボッチャについては、私は大好きです。奥の深い、素晴らしい競技であることに疑いはありません。私が最初に触れて一瞬でとりこになったのも競技ボッチャの体験でしたし。東京パラリンピックでもみんなで盛り上がり、金メダルを獲得した日本チームの皆さんをリスペクトしています。でも、野球にプロ野球と草野球があるように、ボッチャにも競技ボッチャと「草」ボッチャがあっていいと思うのです。もっと多くの人が手軽にプレーをし始めることができるように! 野球のボールやバットに違う規格があるように、ボッチャにも価格が高い公認球だけでなく、手軽に手に入るボールがあっていいと。  また、それと同じで、コートも10mという大きなサイズにこだわらなくてもいいと思いました。ハーフサイズや、もっと小さくて、室内に設置できるサイズでプレーしてもいいと思うのです。それでも、ボッチャは楽しめるのです。本当に、小さいコートでもフルサイズに引けをとらない奥深さで楽しめるのがボッチャなのですから。カフェコートは飲食店などの室内でプレーできるようにと考えたものですが、実際にバーやスナックなどでビリヤードやダーツの代わりにおいてもらえれば、盛り上がりますよ!(後編へ続く) 視覚障がい者に向けて「ハンディボード」も開発中

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