スポーツしやすい社会を目指して(その1)
東京2020パラリンピックの開催が近づき、パラスポーツへの関心が高まっている。社会的には2015年にスポーツ庁が発足し、それまで厚生労働省の所管だったパラスポーツと文部科学省のオリンピックスポーツが移管された。そのことはメダルを目標としているアスリートたちにとって追い風となった。パラリンピック選手たちも国立スポーツ科学センター(JISS)の施設とプログラムを利用できるようなったからだ。
その効果は早くも現れており、平昌パラリンピックのメダリストたちは、オリンピック選手たちとともにJISSで厳しいトレーニングをして、結果を出している。
また各競技団体は財政的な支援も受けられるようになり、海外への選手派遣などもしやすくなっている。
ところが、こうした恩恵をすべてのパラアスリートが享受できているわけではない。パラスポーツは選手たちの障がいで、身体機能障がいと知的障がいに分かれ、現在、東京大会の恩恵を受けられているのはパラリンピック種目に限った選手たちなのだ。
現在、陸上競技と水泳、卓球の3競技では、パラリンピックに知的障がい者も出場している。ただその他の競技については、「世界大会への参加国数や競技人口、また競技レベルの問題」などの理由から参加が実現していない。
そこで障がい者スポーツの普及発展に取り組んできた日本体育大学教授の野村一路さんらは全日本知的障がい者スポーツ協会(ANiSA)を設立。国内の統括団体として、国際団体との連携や各競技団体のスポーツ支援をしていこうと動き始めている。
知的障がい者のスポーツはいくつもの課題を抱えている。
「パラリンピックが注目されているなか、知的障がい者スポーツが取り残されている」と野村さんも危惧している。
日本パラリンピック委員会(JPC)がパラリンピックに参加する時の窓口となっている。ところが国内において、知的障がい者スポーツを統括する団体が実質的には存在しなかったため、日本知的障がい者陸上競技連盟などは、JPCや日本障がい者スポーツ協会と連携することで国際大会への選手派遣などをしてきた。
「ドイツで開催された知的障がい者の柔道大会に日本選手がエントリーしていた。そこで主催者は全日本柔道連盟に選手派遣をしたのか照会してきた。調べてみると個人的な参加だった。そこで連盟内に知的障がい者柔道振興部会を設けることになった」
競技団体が整備されていないことでさまざまな不都合が生じている一例だ。
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