町工場のポテンシャル(クリスタル産業株式会社)Magazine2019年02月27日share facebookshare xshare pinterestshare lineshare hatebuアンプティサッカーで、フィールドプレイヤーが使うクラッチ(杖)の正式名称は、「エルボークラッチ」と言い、考案したA・R・ロフストランドJrにちなんで、「ロフストランドクラッチ」と呼ばれている。1948年にアメリカで特許を取得しており、歴史は古い。もちろんこれは、アンプティサッカー用ではなく、障がい者のために考案されたものだ。 日本のアンプティサッカーで使用されるロフストランドクラッチで9割ものシェアを握っているのが、名古屋に本社・工場を置くクリスタル産業だ。どういった経緯で、アンプティサッカーで使われるようになったのか、社長の上村秀信さんに聞いてみた。 「4、5年前に某義足メーカーの社長から連絡があって、アンプティサッカー協会が体験用にロフストランドクラッチを買いたいと言っているけど安くならないかと。うちの倉庫には、機能的にはまったく問題はないが傷が付くなどして商品として出荷できないものがあったので、それをあげるよと言って、協会に無償で送ったんです。そうしたら代表監督の杉野さんから直接お礼の連絡をいただいて、11月に日本選手権があるというので観に行ったら、ほとんどの選手がうちのクラッチを使っていてびっくりしました」 当初は、一般用の高さ調節機能が付いたモデルを使っていたという。調節機能は便利な反面、その機能自体が徐々に劣化するという弱点がある。重量的な問題や耐久性など、アクティブなアンプティサッカーで使用するには課題もあった。 クリスタル産業は、その当時から、オーダーメイドのロフストランドクラッチも扱っていた。高さ調節機能を必要としない人向けのモデルで、より軽量で耐久性が高いという特徴があった。 「高さ調節ができるタイプは、機能の耐久性が弱点だったので、障がい者や高齢者向けにオーダーメイドを推奨していたんです。そうしたら、どんどん売れるようになった。実は、アンプティサッカーの人たちが使ってくれていたんです」 現在、アンプティサッカーで使われているクリスタル産業のロフストランドクラッチは、特別なモデルではない。お年寄りや障がい者に、使い勝手がよく長く使えるものを提供したいとの想いで安全性を重視して開発したものが、アンプティサッカーでも使用できる高い性能を備えていたということだ。耐久性にはこだわっており、素材のアルミ合金は金属バットにも使われている材質に近い種類のものを使用している。詳しくは企業秘密だそうだ。 クリスタル産業の歴史は、先代の上村真一氏が、1965年にステンレス鋼管を輸出するクリスタル貿易商会を設立したことに始まる。 ロフストランドクラッチを作るきっかけは、55年ほど前。当時はまだ輸入品しかなかったものを「パイプのことならクリスタルがよく知っているから作れないか」という話がきたことだという。ただその時は質のいいアルミのパイプがなく、外国のクラッチを参考にしながら試行錯誤して開発したのだそうだ。 会社の沿革を見ると、1975年に「長さ調節可能スキー用ストックを開発し製造開始」とある。これはいったいどういうことなのだろうか。 「今では当たり前になっていますが、長さを調節できるストックの回して固定する機能は、父が考案して構造的な特許を世界で初めて取りました。ヨーロッパでは、長さが調節できるストックをスキーのレンタルに使っていて、オーストリア、ベルギー、ドイツなどに輸出していました。現在のラインナップの長さが調節できる杖のなかには、同じ構造のものがあります」 真一氏は、かなりのアイデアマンだったようで、杖や車いすに関する数々の特許を取得している。その優れた開発力が、現在の製品にも受け継がれていることがうかがえる。 取材・文/辻野 聡 写真/辻野 聡、吉村もと« 世界が認めた車いす(2/2)ラグ車に懸ける! (メカニック:三山慧) »pr blockhttps://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-06423-9https://www.j-n.co.jp/books/genrelist/lgenre1/mgenre5/sgenre97/https://psm.j-n.co.jp/mecenat-booth/https://psm.j-n.co.jp/category/federation/https://psm.j-n.co.jp/shop/