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  パラアスリートであること そのプライドを語る(3/3)

パラアスリートであること そのプライドを語る(3/3)

̶レーム選手は、 15年の世界選手権で8m 40㎝という世界記録をマークし、16年のリオ五輪出場を希望されていましたね。しかし、義足の優位性がないことを証明しなくてはならず、実現しませんでした。2020年の東京でも、オリンピック出場を目指していますか。   レーム オリンピック出場は、とてもチャレンジングなことです。今でも国際陸上競技連盟とは、ずっと話し合いを続けています。リオ大会後もあらゆる調査や協議を進めてきました。 ただ、重要なのは、私はパラリンピアンとして誇りを持っているということです。オリンピック出場を目指していたころ、いろんな噂が流れました。マルクスはもう、パラリンピックには興味がなくオリンピックだけに出場したいのではないかと。それは完全に間違いです。私がオリンピックに出場したいのは、パラアスリートがここまでできるということを証明したいことが一番の理由です。オリンピックは素晴らしいスポーツの祭典です。でも、パラリンピックも同様です。私たちパラアスリートは、それを体現しているのです。   伊藤 それはまったく同感ですね。   レーム 将来的なビジョンとして、オリンピックとパラリンピックはもっと近づいたらいい、と思っています。今私が夢見ているのは、オリンピックが終了する日にリレーをすること。4x100mで2人はオリンピアン、2人はパラリンピアンのミックスリレーです。これをオリンピックとパラリンピックをつなぐ新種目にできないか。さらに、オリンピックの聖火をそのままパラリンピックの聖火台に灯して開幕することができたら、と強く思っています。   伊藤 つまり、オリンピックの閉会式と、パラリンピックの開会式をつなぐということですか。それが実現したら、すごいなあ。   レーム そうです。私は、オリンピックとパラリンピックを完全にひとつにするということはありえないと思っています。オリンピックとパラリンピックでは価値や意義が異なります。パラリンピックとして存続することはとても重要なのです。統合することがゴールではありません。ただ、オリンピアンもパラリンピアンも「スポーツを愛する者」というところでは、同じだと思っています。だからこそ、オリンピックからパラリンピックにつなぐ、開催時期を含めた距離をもっと近くすることができればいいな、と思っているんです。もし実現したら、私はスタジアムの観客の一人として自分の夢がかなったと、涙を流すことでしょう。   伊藤 私もその時には一緒に泣きたいですね。その夢に一番近いのがマルクス選手なんです。オリンピックとパラリンピックの架け橋になれる、稀有な存在ですよ。その彼が、パラリンピアンであることを誇りに思い、すべてのパラアスリートをリスペクトすると言う。そういうマルクス選手を、私は心から誇りに思います。同じ舞台で戦う人間として、今日また心新たに、これから競技に邁進できると感じました。ありがとうございます。   レーム こちらこそ、ありがとうございます。2020年の東京パラリンピックのスタジアムで、最高のパフォーマンスを世界に見せつけましょう! 取材・文/宮崎 恵理 写真/吉村もと


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