
パラアスリートたちの軌跡① ドリーム対談2/2


2018年7月に開催されたジャパンパラ競技大会。世界新を更新し、レームは気軽に大会ボランティアの学生たちとの記念撮影に応じた。競技者として愛される要因は、この気さくさにもある
2018年7月8日、ジャパンパラ陸上競技大会の男子走り幅跳びは、跳躍種目の最後に行われた。6回目の最終試技。レームが、体を大きく後ろに反らせた体勢から助走をはじめ、ぐんぐんスピードを増していく。義足の右足で踏み切ると、体が放物線を描き、8mを大きく超えて着地した。勢いで体がそのまま砂場の枠外に転がるようにして出た。 「ウォー!」 スタンドから大歓声がはじけた。8m47㎝。日本で飛び出した3年ぶりの世界新である。 跳躍後、レームはスタンドの声援に両手を振って応えると、そのままレフェリーや記録を担当するスタッフに駆け寄り、一人ひとりに感謝を伝えていた。 「パラリンピアンであることを誇りに思い、パラアスリートが限界を超えていくことを証明したい」 伊藤、レームのように人生の途中で障がいを負い、そこからパラスポーツに取り組む人は少なくない。今ある自分の体を見つめ、磨いていく。その先に、栄光がある。 心揺さぶる珠玉の言葉の数々と、進化を遂げるパフォーマンス。パラアスリートたちの生き様が伝えてくれるメッセージは、とてつもなく大きい。


マーク・レーム/Markus Rehm 1988年、ドイツ生まれ。バイエル04所属。T64クラス。14歳の時、ウェイクボードの練習中にボートのスクリューに右足を巻き込まれ切断。2009年にパラ陸上にデビュー、初出場したロンドンパラリンピックでは7m35㎝で金メダル、4x100mリレーで銅メダル。14年、一般の陸上競技のドイツ選手権に出場し8m24㎝をマークして優勝すると、競技用義足の優位性について議論が巻き起こる。16年のリオデジャネイロパラリンピックでは8m21㎝で大会2連覇を達成。2018年8月、8m48㎝で世界記録を更新した。