パラアスリートたちの軌跡① ドリーム対談2/2
2018年7月8日、ジャパンパラ陸上競技大会の男子走り幅跳びは、跳躍種目の最後に行われた。6回目の最終試技。レームが、体を大きく後ろに反らせた体勢から助走をはじめ、ぐんぐんスピードを増していく。義足の右足で踏み切ると、体が放物線を描き、8mを大きく超えて着地した。勢いで体がそのまま砂場の枠外に転がるようにして出た。 「ウォー!」 スタンドから大歓声がはじけた。8m47㎝。日本で飛び出した3年ぶりの世界新である。 跳躍後、レームはスタンドの声援に両手を振って応えると、そのままレフェリーや記録を担当するスタッフに駆け寄り、一人ひとりに感謝を伝えていた。 「パラリンピアンであることを誇りに思い、パラアスリートが限界を超えていくことを証明したい」 伊藤、レームのように人生の途中で障がいを負い、そこからパラスポーツに取り組む人は少なくない。今ある自分の体を見つめ、磨いていく。その先に、栄光がある。 心揺さぶる珠玉の言葉の数々と、進化を遂げるパフォーマンス。パラアスリートたちの生き様が伝えてくれるメッセージは、とてつもなく大きい。
伊藤智也/いとう・ともや 1963年、三重県生まれ。 バイエル所属。T52クラス。1998年、多発性硬化症を発症し車いす生活となる。2001年に大分国際車椅子マラソンでデビュー、03年にパラ陸上の世界選手権に初出場、400m、1500m、車いすマラソンで金メダル、800mで銀メダル。パラリンピックはアテネに初出場し、北京では400m、800mで金メダル、200mで銅メダル。ロンドンでは200m、400m、800mで銀メダルを獲得し、現役を引退。2018年に復帰、ジャパンパラ競技大会では200m優勝、400m、800mで2位。 取材・文/宮崎恵理 写真/吉村もと 取材協力/バイエル ホールディング株式会社