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  アジア記録3、日本記録23、大会記録36!パラアスリートが躍動した「第36回日本パラ陸上選手権大会」

アジア記録3、日本記録23、大会記録36!パラアスリートが躍動した「第36回日本パラ陸上選手権大会」

4月26日から2日間の日程で、パラ陸上の日本一決定戦、「日本パラ陸上競技選手権大会」が愛媛県松山市のニンジニアスタジアムで行われた。約250名のアスリートがそれぞれの目標に挑み、好天にも後押しされ、多くの好記録が誕生した。2日目は風が強く吹く時間帯もあり、追い風参考記録も多数あったなか、2日間でアジア記録が3、日本記録が23、大会記録36が更新された。

女子100mで15秒55、走り幅跳びでは4m88と、自らの持つ2つのアジア記録を更新した兎澤朋美

兎澤朋美(T63・片大腿義足/富士通)は女子100mで15秒55をマークし約4年ぶりに、走り幅跳びでは4m88(+1.5)を跳び3年ぶりに、自らの持つ2つのアジア記録を塗り替えた。

シーズン初戦での快挙に、100mについては、「やっと更新できてホッとした。(練習の)方向性は間違っていないと確認できた」と話した。走り幅跳びについては追い風参考記録ながら3回目には4m96(+3.5)もマークし、ここ数年目標に掲げている5m越えが、「今日、すごく具体的に現実的になったなと、ひとつ手応えは得られた。いい流れのまま今シーズン走り抜けられるようにしたい」と、笑顔ながら力強く言い切った。

女子砲丸投げの堀玲那(F20)は、12m81を投げて自身のアジア記録を34㎝更新

もうひとつのアジア新は女子砲丸投げで、堀玲那(F20・知的障害/WORLD-AC)が2投目に12m81を投げ、自身が2023年に作ったアジア記録を34㎝伸ばした。

「公式戦で12m後半を投げられていない弱さを感じていたし、自己ベストも2023年からできていなかったので、本当にホッとした」と笑顔を見せた。今年4月から岡山市のパラ陸上実業団、World-ACに所属したばかりの堀。「チームの一員として、初戦でしっかり自己ベストを出せたことは本当に嬉しい」と語り、さらなる飛躍を誓った。

松本武尊(T36)は男子100mで自身の記録を0秒1更新する12秒03の日本新記録で、9月に行われる世界選手権の派遣標準記録を突破した

今大会は、9月にインド・ニューデリーで開幕する世界選手権の代表選考会のひとつにも位置付けられている。多くの選手が派遣標準記録に挑むなか、松本武尊(T36・脳原性まひ/ACKITA)は男子100mで12秒03(+2.0)派遣標準を突破。同時に、自身のもつ日本記録を0秒1、塗り替えた。

しかし本人は、「派遣標準や日本新は頭になく、とにかく11秒台を出さなければと思っていたので悔しい」と残念がった。スタートがやり直しとなり、「1回目のピストルの時はすごくスタートがうまくいった。それでも、2回目は接地がちょっと外側すぎて遅れた」と振り返り、「11秒台が近づき、モチベーションがあがった」と前を向いた。

松本は専門種目の400mではすでに世界選手権の派遣標準をクリアしており、今季は世界選手権でのメダル獲得が大きな目標だ。さらに、4年後のロサンゼルスパラリンピックも見据え、増量による肉体改造にも挑んでいる。昨年春から約10㎏増量し、「疲れなくなったし、体幹が強くなって走りが安定してきた」と効果を語る。また、昨年から本格的に取り組みだした走り幅跳びでも5m9(+2.0)を跳び、自身がもつ日本記録を9㎝更新した。同クラスの世界記録は6m05、アジア記録は5m75(*)と世界とはまだ差があるが、多様な種目に挑戦することで、「陸上競技をできるだけ長く楽しみたい」と意欲的だ。(*いずれも、2025年4月27日時点)

大会期間中には「ブレードランニングクリニック in 愛媛」「ブラインドランナーの観戦・体験会ツアー」が開催され、参加者は義足で走る体験を楽しんだ

大会期間中には、パラ陸上の体験会も開かれた。初日は走るためのスポーツ義足を用いた「ブレードランニングクリニック in 愛媛」が、2日目は「ブラインドランナーの観戦・体験会ツアー」が行われ、愛媛県内からを中心に約10名が参加した。

「ブレードランニングクリニック in 愛媛」では、希望者にはスポーツ義足が貸し出され、現役の義足アスリートや義肢装具士など専門家の指導のもと、ランニングを楽しんだ。その後、アスリートたちを囲んだ交流会も行われ、笑顔あふれる時間が流れた。

取材・文/星野恭子 写真/吉村もと



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