
「ゴスペラーズ」がゴールボール日本代表の応援アンバサダーに就任!

競技の楽しさ、すごさ、神秘を伝えていきたい
日本ゴールボール協会(JGBA)は6月30日、5人組男性ボーカルグループ「ゴスペラーズ」がゴールボール日本代表「オリオンJAPAN」の応援アンバサダーに就任したと発表した。事前に味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた記念式典では、ゴールボール男女強化指定選手が見守る中、JGBA梶本美智子会長からゴスペラーズに任命状と記念盾が送られた。
ゴスペラーズリーダーの村上てつやさんは、「ゴールボールの観る楽しさややってみる楽しさを伝えて、競技に興味を持つきっかけを作れるように、我々で精一杯応援させてもらいたいです」と意気込みを語った。
今後は応援アンバサダーとして継続的な情報発信やイベント協力など音楽を通して応援していく。村上さんは、「オリオンJAPANの皆さんには、これからもいい結果を出していただきたい。僕らも選手のみなさんのモチベーションとなれるように歌いたいですし、機会があるごとに『ゴールボールというスポーツ、すごいよ、楽しいよ、神秘だよ』と伝えたいと思います」と力を込めた。
応援は東京2020大会から
ゴスペラーズとゴールボールのつながりは、東京2020パラリンピックまでさかのぼる。たまたまメンバーの酒井雄二さんの目に留まり、SNSで「ゴールボール女子すごいね」と投稿。それを機にメンバーやファンの間などに認知が広まった。
さらに昨年9月のパリ2024大会で、注目度が一気に高まった。10年以上も前からゴスペラーズのファンである男子日本代表の萩原直輝が大会前にSNSで、ライブDVD特典だった靴紐を「パリに持参する」と投稿。それを見た他のゴスペラーズファンがSNSで拡散し、応援機運がさらに広がった。パリ大会期間中にはゴスペラーズのメンバーが毎試合、テレビなどで観戦しリアルタイムで応援メッセージを発信。男子の金メダル獲得の瞬間にも祝福のメッセージが発信され、大いに盛り上がった。
同11月にもゴスペラーズは、都内で開催されたJGBA30周年記念式典にサプライズで登場して歌唱し、選手たちを喜ばせた。ちなみに、ゴスペラーズにとっても昨年は、デビュー30年の節目だったという。
ゴールボール体験でより深まった興味

応援アンバサダー就任に先立ち、「実際に競技を体験してみたい」というゴスペラーズメンバーの声を受け、3月にはゴールボールの体験会が実施された。

当日はまず、男女強化指定選手たちのサポートのもと、メンバーは基礎トレーニングからボールの投げ方や守備姿勢といった基礎技術の練習を行った。最後はアイシェード(目隠し)を着けて、ミニゲームにも挑戦した。
体験を終えて酒井さんは、「初めてゴールボールを目にした時は、座った状態からプレーが始まるので『体力的には少し楽かもしれない』と感じましたが、実際にはとても激しくて、汗だく。個人技だけでなく、チームとしての信頼関係や呼吸が非常に重要であることも体験を通じてわかり、『うまくなりたい』という気持ちが生まれました。ラウンドワンやスポッチャなどでできないかな」と、プレーする楽しさにも目覚めた様子。
黒沢薫さんは、「視覚を遮断した状態でのプレーは想像以上に難しく、改めて『選手は超人だ』と思ってしまったほど。体験を通して、選手の方々への尊敬の気持ちが増しました。すぐには思うようなプレーができない難しさと悔しさも感じ、ゴールボールには挑戦のしがいのある面白さがあることもわかりました」とコメント。

村上さんは、「競技中、改めて『聴く力』と『信じる力』の重要性を実感しました。多くの人に会場でゴールボールを見てほしい。テレビで応援しているのとはスピード感が違います。審判が『クワイエット・プリーズ』と声を掛け、音がなくなったときの空気感や、選手の研ぎ澄まされていく感覚に観客席もシンクロしていく感じなど、いろいろ素晴らしい体験でした」と、ゴールボールの魅力を再発見していた。

安岡優さんは、「萩原選手が試合前にゴスペラーズの曲を聞いてテンションをあげてくれているというのをSNSで発信してくれて、パリのときはうちのファンも一丸となって応援していました。今日はゴールボールを初めて体験し、純粋に楽しいスポーツだなと実感しました。最初は何も見えない状況で動くことに戸惑いがありましたが、自分の中で『音を頼りに見えるようになる』感覚が芽生えた瞬間は、とても嬉しかったですね。『次はどんなボールがくるんだろう…!』というワクワク感がありました」と振り返った。

北山陽一さんは、「私たちも30年にわたって同じメンバーで活動をしてきて、音楽以外の場面でも、この人はこういう動き方するというクセをみんな把握しています。ゴールボールの選手の皆さんを見ていると、それと似たような、言葉ではなく感覚で通じ合う高度なチームワークがあることがわかりました。自分たちもなんとなくわかったつもりでいたコミュニケーションについて、もう一歩深いレベルがあると知ることができ、ライブにも生かせたらと思いました」と話した。
さらに村上さんは、「ゴールボールの会場は、観客が心も耳も音に集中しているから、アカペラにはいい環境かもしれないですね。歌わせてもらえる機会があるなら、僕らにとっても幸せな環境だと思います」と大会会場での歌唱による応援の可能性と期待も口にしていた。

さらなる活躍を約束
ゴスペラーズの熱い応援は選手たちの背中を強く押した。萩原は体験会後、「率直に嬉しい。夢のような時間でした。途中からファンの顔を出してしまって、話したいのに話しかけられず、うろうろしてしまいました」と照れ笑いしつつ、「パリの時の応援も嬉しかったですが、パリ大会後の国内大会や体験会に、ファンの方たちが来てくれたのも嬉しかった。競技へのモチベーションになります」と感謝した。また、「ゴスペラーズの皆さんはサーチ(ボールの音を聴き取ること)がすぐにできていましたね」とメンバーの音感の良さにも感心していた。
金子和也キャプテンは、「パリの試合を全部見て応援してくださっていて嬉しかったですし、パリのプレーを見て、体験したいと思ってここまで足を運んでくださった。ゴールボールを知ろうと思ってくださっていることが嬉しいです」と感謝。宮食行次は、「これからも結果を出し続けて、常にゴスペラーズの皆さんをはじめ、多くの方から応援されるようなチームになっていきたいです」と決意を新たにしていた。
<ゴールボール今後の主な大会予定>
2025ジャパンパラゴールボール競技大会 (国際大会) 2025年10月2日(木)~4日(土)/豊橋市総合体育館 (愛知県豊橋市)
Money Doctor 2025日本ゴールボール選手権大会 (クラブチーム日本一決定戦) 2025年11月22日(土)~23日(日)/所沢市民体育館 (埼玉県所沢市)
文・写真/星野恭子