Home > News >  「LIGA.i 」ブラインドサッカートップリーグ2025が開幕!
  「LIGA.i 」ブラインドサッカートップリーグ2025が開幕!

「LIGA.i 」ブラインドサッカートップリーグ2025が開幕!

ブラインドサッカーの国内トップのリーグ戦「LIGA.i(リーガアイ)」が8月2日、品川区立総合体育館(東京・品川区)で開幕した。リーグ創設から4季目を迎えた今季、第1節の「Sinagawa LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2025」には、品川CCパペレシアル、free bird mejirodai、埼玉T.Wings、buen cambio yokohamaというお馴染みの4チームが参加、初戦から激しい試合が展開された。

LIGA.iは2022年に「一つ先の新リーグ」としてスタート。約30のクラブチームが活動するなか、競技実績やチーム運営などの評価基準をクリアしたチームだけが出場できる。これまで上記4チームが連続出場を果たしているが、過去3回は毎年優勝チームが入れ変わるなど、1点を争う実力拮抗の試合が連続し、年々人気を高めてきた。今季からは新たにPK戦が導入されて引き分けがなくなり、PK戦勝利チームは勝ち点2を得るなど勝ち点制度も変更された。混戦必至の変更により、全3節の最終試合まで優勝シャーレの行方がわからない白熱の戦いが予想される。

復帰戦の丹羽海斗が豪快シュート!昨季2位のfree bird mejirodaiが暫定首位に

横浜の選手に囲まれながら、ドリブル突破を試みる目白台の大元壮(中央)

そんななか、重要な初戦で勝利し、勝ち点3を手にしたのは、一昨年王者で昨季2位の目白台だ。第2試合で今季初優勝を目指す横浜を1対0で下した。前半11分、目白台が得た左コーナーキックから園部優月が絶妙なクロスボールを放ち、ゴール前で待ち構えた丹羽海斗がダイレクトで振り抜いて横浜ゴールに突き刺した。会場をどよめかす決勝弾だった。

Player of the Matchも受賞した丹羽は、「いろいろな形の練習をしているなか、チームでやってきたこと(の一つ)でした。それを試合の中で1番いい形で出せたのかなということで、自分を素直に褒めてあげたいです」と笑顔。「でも、仲間と一緒に練習してきて今がある。実はボールの移動中にガイドの鈴木(仰)さんが『ダイレクト!』って言ってくれたんです。その声があって、後押しされて、『よし、これは狙いにいくしかない』って、そうしたら、成功しました。本当に文字通り、チームのみんなで取った点。僕1人だったら決断できなかなかったかもしれないです」と仲間たちにも感謝した。

Player-of-the-Matchを受賞した丹羽海斗(中央)

丹羽はいつにも増して嬉しそうだった。実は、約2年前に左ひざの後十字靭帯を損傷し、再建手術を受けていた。「フルパワーで復帰できたのは2年越し」で、久しぶりのLIGA.i出場を前に、「今週はずっと緊張していて、今日もすごく朝早く目覚めてしまいました。ずっとストレッチしたり、どうしようと思っていたんですけど、試合に入ったら、チームのみんなと一緒に試合できるのが本当に楽しくて……。ケガの間支えてくれたチームメイトや、何よりも家族にありがとうございますと伝えたいです。復活できてよかったです」とかみしめた。

リハビリ期間中も丹羽は車いすなどで大会会場を訪れ、チームを応援したり、時には観客に試合解説を行うなど精力的だった。「外から試合を見るなかで、改めて客観的な視点を持てた」と振り返るとともに、「解説をする中でお客様とお話する機会をいただき、こんなに応援してくれている方がいるんだとわかりました。また、『初めて見たけど、解説が面白くてわかりやすかった』という声もいただいて、もっといいプレーをして、ファンを増やせるように頑張ろうというモチベーションにつながっています」と力を込めた。休んでいた間、チームは初優勝を果たすなど好調で、後輩たちの成長もあり、丹羽は「復活しても、もう自分の居場所はないんじゃないか」と不安も感じていたという。それでも、「チームの成長はポジティブな部分。誰が出ても戦えるというチームに、どんどんなってきているかなと思います。これからもっと(層を)厚くして、みんなで切磋琢磨して強いチームになれたらいい」と力を込めた。

目白台の山本夏幹監督は丹羽の活躍を、「素晴らしいシュートでした。チームとして約束を決めていましたが、練習通りに彼がしっかり出した結果」と評価。さらに、登録したフィールドプレーヤー全員が出場し、役割を果たしての勝利に、「大ケガから復帰した彼や、(若手の大元)壮くんとか、これからの選手たちにとっての大事な大会にしたいというのがチームとしての位置付けだったので、もう完璧でしたね」とチームも称えた。

目白台は日本代表経験者や強化指定選手などを多数擁し、層の厚さという意味ではリーグトップクラスだが、山本監督は、「(ケガなどなく)全員が揃うのは久しぶり。メンバーを選べるような状況にまできているのは非常にありがたいです」と目を細めた。目白台は王者奪還へ最高のスタートを切ったようだ。

目白台の守備を交わし、味方へのパスを繰り出す横浜の齊藤悠希(右)

一方、惜敗した横浜のキャプテン、齊藤悠希は「結果的には悔しい」と振り返ったが、手応えも口にした。昨季まではレギュラー4人主体のチームだったが、今季は短時間ながら控え2選手が出場を果たし、強烈なシュートなど今後の可能性を感じさせるプレーも見せた。「いい経験になったと思うし、逆にレギュラーには『安心してたら出られなくなる』という刺激になったと思います」と振り返った。また、「これまではボコボコにされる場面もありましたが、今回は『戦えている』という自信が感じられ、それが後半、いい動きに変わっていきました。ハーフタイムにみんながプレーについて意見を言い合うのは今までになかったこと。チームの意識が変わってきているようです」とメンバーの成長にも触れた。初優勝に向け、チーム一丸での巻き返しに期待したい。

歴代王者同士による第1試合。劇的展開でPK決着

埼玉ゴールに何度も迫った品川の森田翼(右)
コーナーキックのチャンスからゴールを狙う埼玉の菊島宙(右)

新レギュレーションが今季開幕戦から効力を発揮した。昨季王者の品川と初代王者の埼玉が互いに2回目の優勝を目指し、キックオフから果敢にゴールを狙って激しい攻防を展開。“ホームチーム”の品川がサポーターの熱いエールも後押しに、日本代表主将の川村怜や森田翼らが積極的にゴール前に侵入。一方、埼玉もエース、菊島宙を軸に多彩な攻撃を見せたが、両者とも守り切り、前後半を終えて0対0。大会初のPK戦へと突入した。

Player-of-the-Matchを受賞した佐々木ロベルト泉。PK戦で品川の1点目を決めた

国際ルールと同じ3人制のPK戦は、品川の先攻で始まった。まず埼玉一人目の菊島が決めてリードしたが、3人目で品川の佐々木ロベルト泉が入れ返し、勝負はサドンデスへ。5人目で品川の寺西一が決めたのに対し、埼玉は決めきれず、品川がPK2対1で勝利をつかんだ。新レギュレーションにより、品川が勝ち点2を、埼玉が勝ち点1を得た。Player of the Matchには攻守にわたって体を張ったプレーを披露し、PK戦でも活躍した品川の佐々木が受賞した。

今季は連覇に挑む品川の川村は、「相手の守備の強度も上がっていて、難しい試合でした」と振り返り、小島雄登監督は、「PKに行く前に決めたかったのが正直なところ。勝ち点3がほしかったです」と悔しさものぞかせた。川村や佐々木などベテラン勢に加え、森田翼や井上流衣もゴール前でいい動きを見せた点は、「ゲームを有利に進められた」と評価しつつ、「最後のフィニッシュが課題」と今後への修正点も口にした。

埼玉の菊島は「チームとして最初の5分でどんどん前から攻めていこうっていうのは決めていました。相手のポジショニングがうまくて、どこに行っても1人はいました」と悔しさをのぞかせた。菊島充監督は、「PKで勝てると思ったので惜しかったです。でも、面白い試合はできたと思います」とチームの健闘を称えた。今季は成長株の晴眼選手、山中優太や助川裕太郎で「点を取る試合をしたい」と目標を掲げた。

敗れはしたが、PK戦導入について菊池監督は、「最高のルール変更。リーグが盛り上がることが大事」と前向きに受け止める。一方、PK戦で勝ち点2を獲得した小島監督は、終盤の0対0の局面で、「点を取りに行くのか、勝ち点2を狙うのかなど、最後の判断は難しかった」と昨季とは異なる指揮官の胸の内を明かした。

目白台の山本監督はPK戦導入で大会が面白くなることは認めつつ、「うちとしては避けたい。やっぱり流れで(勝利を)決めたいです」と話し、横浜の齊藤は、「最初からPK戦を狙うチームはないと思いますが、引き分けの先にもう1個あるのはいいことですね」と、勝ち点1が2になる可能性を歓迎した。

新たな勝ち点制度がチーム事情や思惑も加味した戦術選択にも影響を及ぼすとすれば、観客にとっても観るポイントが増え、より興味深く観戦できそうだ。

今季はもう一つ運営上で変更があった。「1節2試合」が基本フォーマットのLIGA.i、はこれまで2試合を通して観戦できる1日券が販売されていたが、今季から入れ替え制となり、1試合ごとにチケットが必要となった。この結果、この日の2試合とも各チームのサポーターらでスタンドは埋まり、この会場としては過去最多となる857名の観客数を記録した。より熱のこもった声援が選手たちに送られ、会場の雰囲気もよかった。

新レギュレーション導入により過去にない展開も注目されるLIGA.i 2025は、この先、第2節は12月7日にフクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京・墨田区)で、最終節は来年2月23日に横浜武道館(横浜市)で、開催が予定されている。

文・写真/星野恭子



pr block

page top