Home > News >  【ニューデリー2025世界パラ陸上:2日目】新星誕生! 競技歴約3年の久野竜太朗が男子100mT12(視覚障害)で銀メダル
  【ニューデリー2025世界パラ陸上:2日目】新星誕生! 競技歴約3年の久野竜太朗が男子100mT12(視覚障害)で銀メダル

【ニューデリー2025世界パラ陸上:2日目】新星誕生! 競技歴約3年の久野竜太朗が男子100mT12(視覚障害)で銀メダル

「ニューデリー2025パラ陸上世界選手権」は大会2日目の9月28日、T12(視覚障害)男子100m決勝で、世界選手権初出場の久野竜太朗(シンプレクス)が11秒01(−0.3)のタイムで銀メダルを獲得した。本格的に陸上競技を始めてまだ3年ほどという新星が、初めての大舞台でその才能を一気に開花させた。

世界パラ陸上に初出場で銀メダル獲得という快挙を達成した久野竜太朗。この名前、覚えておこう!

「支えてくれた方々にめちゃくちゃ感謝を伝えたいです。メダル獲得はうれしいと言いたいですが、悔しい。金メダルを獲れるように鍛え直したいですね。ロサンゼルスパラリンピックを目指してもっと練習し、そこで金メダルを獲得したいです」

今大会前までに10秒99の自己ベストを持っていた久野は、27日に行われた今大会の予選で10秒94をたたき出した。これは、T12クラスの日本新記録に相当する好タイムで、準決勝ではさらに、アジア記録タイに相当する10秒91まで伸ばす快走を見せた。

準決勝でアジア記録タイに相当する10秒91まで記録を伸ばした久野の力強い走り

決勝ではタイムを落としたが、「前を走る選手を見て固くなってしまいました。試合前に緊張は自覚していませんでしたが、走ってみたら思うような走りができず、崩れてしまいました。プレッシャーを無自覚に感じていたのだと思います。こういう場面の経験だったり、細かい技術を一からやり直さないといけない。今後の課題です」と振り返り、前を向いた。

久野は、日本パラ陸上競技連盟が若い選手や競技歴の浅い選手に国際舞台を経験する機会を与えようと、追加で設けた「若手枠」によって代表切符をつかんでいた。これは22歳以下、または2022年以降に選手登録した選手を対象とし、代表選考標準記録を少し下げたもの。久野はこのチャンスをしっかりとものにした形だ。

先天的な目の難病で進行性の網膜色素変性症による弱視の久野はT13クラスで競技をしていたが、今大会前に初めて国際クラス分けを受けると、より重度なT12クラスと判定された。その後の予選で前述の通り、好走し、「メンタルをぶらすことなく、自分のレースができました」と力強かった。

クラスが変更されたばかりのため、ルール上、日本記録やアジア記録としては認定されないが、大きな可能性と伸びしろを感じさせる結果を残したことは間違いない。

1999年生まれの久野は高校卒業後、社会人となってから急速に病気が進行し、視力も低下。落ち込んだ時期もあったが、将来を考え、視覚支援学校の理療科に進学したことで世界への道が開いた。盲学校には幼稚部から高校まであり、生徒たちは皆、目が見えなくても前向きで、ピアノやさまざまなスポーツにチャレンジする子も多かった。

そんな姿に刺激を受けた久野。それまで本格的なスポーツ経験はなかったが、自身もさまざまなパラスポーツに試してみたところ、幼いころから「足は速かった」こともあり、一番手ごたえを感じたのが、陸上競技だった。すぐさま、健常者主体の陸上クラブに入部し、練習方法を教わったり、ともに競い合ったりするなかで、「結果が数字で出るところが楽しいです。走れば走るだけ伸びるわけでもなく、頭を使います。その試行錯誤も楽しいですね」と、どんどん夢中になっていく。2023年に現所属先にアスリート雇用で採用されると練習量が増え、タイムも急速に伸びていった。

練習を始めた当初は、「今からじゃ遅いのでは、とか、(小柄な)体格のことを言われたこともありました」と振り返るが、今では「世界で2位」の結果を手にした。背中を押してくれた盲学校の生徒たちには、「いつからでも諦めず、何かを本気でやれば、かなえられるものがあるよと伝えたいです」と言い切った。

レース翌日、メダルを受け取って初めて歓びがこみ上げてきたという久野(左)

レース翌日の29日に行われた表彰式で実際に銀メダルを手にすると、「昨日は悔しい気持ちのほうが強かったんですけど、こうやってメダルを首にかけてもらったら、めちゃめちゃ嬉しいです」と笑顔を輝かせた。

改めて目標をたずねると、表情を引き締め、「正直、金はまだ遠いなと思いました。でも、昨日言った通り、諦めていません。僕の目標は金メダル。もっと技術を磨いて、メンタルも磨いて、伸ばしていきたいです」とうなずいた。

初の大舞台で表彰台に立った心境は、「やっとスタートラインに立てたなっていう気持ち。金との差を感じた試合だったので、ここからやっていくぞっていう気持ちです」

計り知れないポテンシャルをもつスプリンターは、ここからどれだけの活躍を見せてくれるだろうか。

取材・文/星野恭子 写真/吉村もと

<ニューデリー2025世界パラ陸上競技選手権大会>

日本パラ陸上競技連盟HP: https://para-ath.org/new_delhi_world_para_2025

 (日本代表選手情報や競技スケジュールなど)

ライブ配信チャンネル: https://www.youtube.com/@paralympics/streams?app=desktop

 (インドとの時差: 日本時間の―3時間半)



pr block

page top