
【ニューデリー2025世界パラ陸上:4日目】川上秀太、100mで自身初の金メダル!さらなる飛躍へ
「ニューデリー2025世界パラ陸上選手権」は4日目となる9月30日、T13(視覚障害)男子100m決勝で、パリパラリンピック銅の川上秀太(アスピカ)が10秒91(−1.3)で金メダルを獲得した。川上は前回の2024年神戸大会で銀、同年のパリパラリンピックでは銅メダルを獲得しており、世界レベルの大会連続3個目で最も輝く色のメダルを手にした。

スタートが2回もやり直しになるイレギュラーな状況にも、集中力を切らすことはなかった。3回目のスタートでも反応よく、4レーンから飛び出すと、すぐさまトップに立つ。終盤、6レーンから2位に入ったオーストラリアのチャド・ぺリスに猛追されるも0.05秒差で振り切り、右手で小さくガッツポーズしながらフィニッシュラインを駆け抜けた。
「コーチとここまでやってきた練習の成果を、まずは出すということを目標にしていました。(その成果を)中盤まで維持できたので金メダルが獲れたと思います。(ぺリスが)迫ってきているのはわかって、危ないなと思いましたが、そこは力みすぎず、しっかり自分の走りに集中できました」
中学時代から陸上競技に取り組み、社会人になった2021年から健常者のレースと並行してパラ陸上にも出場するようになり、経験豊富な川上は、スタートのやり直しにも動じなかった。フライングなどは「よくあること」であり、集中が切れることはなく、「僕は僕の走りをするだけ」と思っていた。
「(やり直し後の)2本目は自分の課題である2次加速のところを確認したいなと思い、その流れで(やり直しが告げられて以降も)少しだけ長めに走りました」。トラブルをむしろ、好機ととらえられる余裕さえあったという。

とはいえ、「今回は金を獲れる予定ではなかった」と話す。2028年のロサンゼルスパラリンピックに、「チャンピオンとして挑むこと」を目標の一つに掲げている川上。だが、実際にチャンピオンになるのはロス大会前年の世界選手権を想定していたからだ。
今回の優勝により、「前倒しではありますが、目標をひとつクリアできました。あとはアルジェリアのアスマニ選手が出てきたレースで勝ち切りたい」と力を込めた。
アスマニとはアルジェリアのスカンデルジャミル・アスマニのことで、川上は昨年、神戸で行われた世界選手権とパリパラリンピックで顔を合わせたが、両レースとも優勝したのはアスマニだった。今大会にはアスマニは出場しておらず、「次こそは」の思いは強い。
そのために今、取り組んでいるのはフォームの改善だ。ストライドの大きなフォームが持ち味だが、ともすると、オーバーストライド気味になる点が課題だという。より速く走るために腕を後ろに引きすぎないフォームで、推進力を上げスピードアップにつなげることを目指す。「そういった点を追求していくことで、より自分自身の走りが磨かれていくと思います」

レース翌日、表彰式を終えた川上は、「試合後に周囲から、『全部の色が揃ったね』と言われたりして、ようやく実感がわいてきました。インドで『君が代』を聴けると思っていなかったので、嬉しいです」と笑顔を見せた。
さらなる目標は来年10月の愛知・名古屋アジアパラ競技大会で、初のアジア王者となること。そして、おそらくトップランナーたちが顔を揃えるだろう2027年の世界選手権で金メダルを獲り、「世界王者」となること。さらには、「次はもっとタイムを上げて、自分の走りをもっと世界に広めたい」。
掲げる目標を一つひとつ達成し、より輝きを増した金メダルをつかみにいく。
取材・文/星野恭子 写真/吉村もと
<ニューデリー2025世界パラ陸上競技選手権大会>
日本パラ陸上競技連盟HP: https://para-ath.org/new_delhi_world_para_2025
(日本代表選手情報や競技スケジュールなど)
ライブ配信チャンネル: https://www.youtube.com/@paralympics/streams?app=desktop
(インドとの時差: 日本時間の―3時間半)