
【ニューデリー2025世界パラ陸上: 6日目】新保大和、円盤投げの最終投てきで銀メダルに届くビッグスロー!

ニューデリー2025世界パラ陸上競技選手権大会6日目の10月2日、14選手が出場したF37(脳原性まひ)男子円盤投げで、パリパラリンピック4位の新保大和(アシックス)が銀メダルを獲得した。
最終6投目で日本新記録となる54m50の渾身の投てきで、5位から2位まで一気に順位を押し上げた。新保は約2週間前の国内大会で自身のもつ日本記録を1m10更新する日本新記録(53m23)を樹立したばかりだが、この大舞台のラストチャンスで、さらに1m37も伸ばした。
新保は、1投目に48m78を投げ、全体4位につけると、2投目も49m66と伸ばす。3回目はファウルだったが、上位8人だけが進める4投目以降に全体4位で進んだ。その後も4投目に49m89、5投目に50m71と順調に記録を伸ばしたが、順位は4位のまま。なかなかメダル圏内に入れない。6投目に入り、新保よりも先に投げたウズベキスタンの選手が新保を上回ってしまい、新保はわずか10cm差で5位に後退。だが、6投目に放ったビッグスローで新保が抜き返して銀メダルをつかんだ。
「良かったというよりも、ホッとした感じがあります。プレッシャーもあったので……」

実は所属先企業を中心に、日本やインド国内から約30人の“応援団”が駆け付けていた。1投ごとに日の丸を振りながら、新保への熱い声援がスタンドに響く。だからこそ、「メダルを獲得して応援に応えたい」という思いも募り、緊張感も少しずつ増していた。また、今大会ではインド入り後、少し体調を崩してしまったこともあり、この日も「力んだり、円盤が遅れ気味になったりして、5投目くらいまではちょっと良くない流れでした」という。
だが、順位を落として迎えた最終6投目は逆に、「とにかく、スムーズに円盤を回すことだけ意識して、『しっかりベストを投げる』くらいの気持ちでいこう」。リラックスした気持ちでサークルを回ると、絶好のタイミングで新保の手から放たれた円盤は、応援団のエールの後押しにも乗って、大きな放物線を描いたのだった。
「最後は、うまいこと、はまったかな」

2000年生まれの新保は着実にステップアップしてきた。中学時代から投てき競技をはじめ、高校生だった2017年、「世界パラ陸上競技ジュニア選手権大会」に出場。円盤投げと砲丸投げで二冠に輝く。大学入学後、初めて出場した2023年のパリ世界選手権で4位入賞、そして、2024年神戸大会では銅、今回が銀と、世界での存在感を増している。
今季は自己新を連発するなど好調の新保。その要因に、「量より質のトレーニング」を挙げた。以前は体重や筋量を増やすなどフィィジカル強化に重きを置いてきたが、社会人になってからはある程度、身体ができてきたこともあり、テクニック面の強化にも力を入れて取り組んでいる。とくにここ数年は投てき技術の改良に打ち込んできた。円盤投げは投てきサークル内で1回転半して円盤を放つが、パワーだけでは思うようには飛ばない。新保は円盤がスムーズに回ることを意識して一連の動きを見直したことが、今季の好結果につながっていると話す。
「今回は1位を取れるかなと思っていました。でも、新しい選手も増えてきているので、自分もちょっと負けられないなという思いがあります」
さらなる飛躍のためには、技術の安定性や再現性を高め、精度をあげることが必要だ。
「まずは今回の記録がミニマムのラインになるぐらいまでに持ってきて、1発を出したら上位に上がれるようにすること。それが、次への課題です」

表彰式後、銀メダルを首に笑顔の新保に改めて感想を聞いた。メダルを手に取ってまじまじと見つめた新保は、「神戸(大会のメダル)よりいい色になりましたが、まだまだ満足しちゃダメです。金メダルに届くまで、もっと頑張りたいです」。表情がぐっと、引き締まった。
取材・文/星野恭子 写真/吉村もと
<ニューデリー2025世界パラ陸上競技選手権大会>
日本パラ陸上競技連盟HP: https://para-ath.org/new_delhi_world_para_2025
(日本代表選手情報や競技スケジュールなど)
ライブ配信チャンネル: https://www.youtube.com/@paralympics/streams?app=desktop
(インドとの時差: 日本時間の―3時間半)