
【ニューデリー2025世界パラ陸上:7日目】福永凌太、400mで銀。自身2個目のメダル獲得も、「空っぽになるような…」
10月3日、T13(視覚障害)男子400m決勝で福永凌太(日本体育大学)が49秒03で2位となり、銀メダルを獲得した。福永にとっては5日目の走り幅跳びにつづく今大会2個目の銀だった。


だが、「悔しいというより、空っぽになるような……。喪失感みたいなものを感じました」。福永はそんな風にレースを振り返った。
「まさかの銀」だった。日本記録でもある福永の持ちタイム(47秒79)は今大会の出場選手中トップ。前日の予選でも49秒14で走り、全体9人中1位で決勝に進出しており、金メダルが大いに期待された。

向かえた決勝レース。福永は号砲に素早く反応してトップに立つと、大きなストライドでリードを広げ、最終コーナーにも先頭で入った。このまま圧勝かと思いきや、後方からドイツのマックス・マルツィラーが猛追。二人が並ぶようにフィニッシュした。一瞬おいて、電光表示板に掲示された勝者の名前はマルツィラー。0.03秒差で福永は敗れた。
「追い上げてきているのは、たぶんラスト50mもないぐらいのところで、やっと気づいたかと思います。そして、少し前に出られたかなと感じて抜き返そうとしましたが、足りなかった。最後は正直、どっちが勝ったのか分からなくて、カメラマンなどの動きで、相手が勝ったんだな、と……」
決勝のレースプランは現在の状態や予選の通過タイムなどを考慮して、「前半をあまり行きすぎず、タイムより勝負を意識しよう」と決めていた。そのプラン自体は、「だいたい実行できたかなと思います」。しかし、結果だけは想定外だった。

今季はスタートから体調不良や足首の捻挫などもあり、「足踏みしたり、後退したり」、なかなか調子が上がらなかった。福永はスプリント系など複数種目に取り組むマルチアスリートで、今季から自転車競技にも挑戦。さまざまなトレーニングの相乗効果で総合的な強化に取り組んできた。すでに100mや走り幅跳びでは自己ベストを更新し、手応えも感じていた。
だが、昨年のパリパラリンピックで銀メダルを獲得した400mについては「うまく走れないことが、ずっと続いてしまいました」という。練習拠点や環境の変化もあり、練習量が少なくなっていることは感じていたが、「なんとかなるだろう」と高をくくっていた。
もちろん、今大会を一番の目標にし、少なくとも足首の捻挫が治った7、8月からは技術的な部分を中心に磨き、準備してきたつもりだった。福永の陸上競技歴は小学校高学年からと長く、大学時代は10種競技に取り組むなど幅広い経験と実績を重ねてきている。だから、大事な部分だけしっかり押さえておけば、うまくいくだろうとも考えていた。だが、「ごまかせませんでした」と肩を落とした。
今季はこれが最終戦の予定だという福永。来季に向けて、「400mでは何がダメだったのかをまずは見つけたいです」と話す。

これからの最大の目標は、3年後のロサンゼルスパラリンピックでの金メダル獲得だ。「うまくいかなかった理由」を手掛かりに、練習内容や強化策を、一から見直すつもりだ。
取材・文/星野恭子 写真/吉村もと