
車いすテニスのドリームマッチ開催! 国枝・小田組 VS 三木・眞田組
10月12日、有明コロシアムで車いすテニスのエキシビションマッチが行われた。
今年9月、車いすテニスでグランドスラム4大会タイトルとパラリンピックの金メダルを制覇し、生涯ゴールデンスラムを達成した小田凱人(東海理化)が登場。男子車いすテニス界きってのレジェンド・国枝慎吾氏とペアを組み、世界ランキング10位の三木拓也(トヨタ自動車)、同45位の眞田卓(TOPPAN)組と対戦した。
これは、第100回全日本テニス選手権2025の記念事業。大会最終日に、1日限りのドリームマッチが実施されたのである。

小田のサービスで試合が始まる。序盤から切れ味の鋭いサーブを繰り出し、三木/眞田組を圧倒。が、三木/眞田組もすぐに息を合わせ、2、3ゲームを連取して主導権を握り返した。
レジェンド国枝氏も現役時代を彷彿とさせる力強いサーブを放ち、巧みに小田を生かす展開で応戦する。
エキシビションらしく、コートチェンジの合間に会場MCによる短いインタビューが入る。ゲーム中、眞田が意表をつくアンダーハンドサーブを繰り出すなど、普段の公式戦とは異なる場面も見られた。また、返球されたボールが国枝の車いすに当たり、「ボールタッチ」で失点するという、現役時代には見られなかった珍しいシーンで、観客を沸かせた。
三木/眞田組が4−2でリードした時点で、40分間のエキシビションが終了した。

「100回記念の全日本テニス選手権という歴史ある大会の中で、車いすテニスの試合をさせていただいたのは光栄です。このようなエキシビションをしたのは、2004年アテネパラリンピックで金メダルを獲得した後、当時ダブルスを組んでいた齋田悟司選手と一緒に参加した時以来。当時は、車いすテニスを知っている人はほとんどいませんでした。20年を経て、今日はこの競技をよく知る観客の前でプレーすることができた。時代の変化を感じましたね」(国枝)
「国枝さんはもちろん、対戦した三木さんも眞田さんも、僕が初めて車いすテニスを知ったロンドンパラリンピックやリオパラリンピックで大活躍していた選手。この3人と一緒に試合ができたのは、とても感慨深いです。いつもの試合とは違う高揚感がありました」(小田)
「実は、この4人は2022年ポルトガルで開催されたワールドチームカップに出場したメンバー。当時、国枝さんが世界ランキング1位で、小田選手が10代で初めてメンバーになって、とても初々しかったことを思い出していました。今日も、白熱した試合を見せることができたのかなと思います」(眞田)
「わずかな時間でしたが、レベルの高いプレーが見せられたのではないかと思っています。これを見た子どもたちが何かを感じとってくれたら嬉しいですね」(三木)

3年前のワールドチームカップではニューカマーとして出場した小田が、憧れのレジェンドと国内でペアを組んでプレーを見せるのは初めてのことだ。
「小田選手の武器であるパワーを、隣でプレーしながら“うわ、すごいな”と純粋に感動する場面もあった」と、国枝氏も称賛を惜しまなかった。
エキシビションマッチとはいえ、両ペアとも真剣そのものだった。「試合前は、それぞれマイクを装着して喋りながらプレーするスタイルを考えたりもしていたようですが、おそらく観客が見たいのはそういうことじゃない」(国枝)。「車いすテニスの“本気“をお見せしたかった」(三木)
4人の思いは、スタンドに届いたはずだ。一方で、「いや、万一マイクをつけたら、笑いを取らなくちゃいけないじゃないですか。そっちの方がハードルが高い。プレッシャーに耐えられない(笑)」と、国枝氏が笑いを誘った。
現役を退いてからは久しぶりの実戦。国枝氏は、このエキシビションマッチのため「1週間特訓した」と明かす。「第100回の記念大会に恥ずかしいプレーはできませんから(笑)」
9月には同じ有明テニスの森公園で男子プロツアーの公式戦である木下グループジャパンオープンが開催され、車いすテニス部門も行われている。
車いすテニスが、テニスの魅力あるカテゴリーとして確かな地位を築きつつある。それを改めて実感させるイベントだった。
文・写真/宮崎恵理