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  車いすバスケ男女日本代表、アジア・オセアニア王者を争う決戦の舞台へ。「世界への挑戦」に注目!

車いすバスケ男女日本代表、アジア・オセアニア王者を争う決戦の舞台へ。「世界への挑戦」に注目!

11月7日にタイ・バンコクで開幕する車いすバスケットボールの2025アジア・オセアニア選手権大会(AOC)を前に、男子ハイパフォーマンス強化カテゴリーの国内合宿(東京都内)が10月31日に公開された。紅白戦で強化してきた成果を披露したほか、AOC代表12選手が大会への意気込みなどを語った。

AOCは来年9月にカナダ・オタワで開催される世界選手権の予選となる重要な大会だ。男女それぞれ上位2チームに世界選手権への出場権が、さらに3、4位チームには世界最終予選への出場権が与えられる。日本男子代表は世界選手権への出場権獲得、さらに、AOC制覇も目指している。

2025アジア・オセアニア選手権大会の日本代表に選ばれた12選手
合宿公開日には紅白戦が行われた

日本男子は東京2020パラリンピックで銀メダルを獲得後、「世界王者を争う大会」から遠ざかっている。2022年のAOCは新型コロナウイルス感染症の影響により大会を途中棄権したため、翌23年の世界選手権の出場権を獲得できなかった。さらに、昨年1月のAOCでは4位に終わり、パリ2024パラリンピック出場も逃していた。

キャプテンの川原凜(右)は「AOCの借りはAOCでしか返せない。応援を力に変えて、タイに乗り込みたい」と決意を語った

世界への再挑戦を期すAOCに向け、キャプテンの川原凛(ローソン)は、「パリ予選のAOCに負けて悔しい思いをして、チームの一人ひとりがもう一度、バスケットボールと向き合う期間をもちました。練習内容を変えたり、環境をガラッと変えたりした選手もいるなか、この12人が選ばれました。あとは練習してきたことを自信をもってやるだけ。AOCの借りはAOCでしか返せない。応援を力に変えて、タイに乗り込みたいです」と、並々ならない思いで臨む。

京谷和幸ヘッドコーチ(HC)はパリ予選敗退後の再始動にあたり、「我々はチャレンジャー。何もない、むしろマイナスからのスタート」と、選手に話したという。改めて、それまで築き上げてきた、「ジャパンスタイル」の継続を強化方針に掲げ、ジャパンスタイルとは攻守の切り替えが速い「トランジションバスケ」の遂行と相手より1.5倍の運動量で築く「強固なディフェンス」を柱にした日本代表の基本戦略だ。

ジャパンスタイルを遂行するためにこの1年半、チーム皆がフィジカルやベーシックスキル、メンタルを磨き、チームの課題である決定力やハーフコートオフェンスなどにも取り組んだ。攻守にわたって強化を進め、オフェンスでは、「トランジションの速い展開のなかで状況判断や決定力を追求。ディフェンスも戦術によってラインアップを替えられるほどに厚みが増したという。

その成果の進捗を確認したのは今年8月だ。ドイツで開かれた「ネーションズカップ」で8チーム中3位に入り、「僕も選手も、ある程度、自信を取り戻せた。これはいけるなというものができた」と手応えを得た。

満を持して臨むAOC男子の部には、日本を含めた6チームからなるディビジョンAと、9チームのディビジョンBが参加する。それぞれ総当たり戦を行い、Aの6チームにBの上位2チームを加えた8チームが決勝トーナメントに進む方式で頂点を争う。

日本男子の初戦は11月8日、パリパラリンピック5位のオーストラリア戦だ。翌9日は前回AOC準優勝のイランと顔を合わせ、以降は韓国(10日)、タイ(11日)、中国(12日)と戦う。13日から決勝トーナメントが始まり、15日の決勝まで負けられない試合が続く。京谷HCは「簡単ではないが、AOCを制覇できる力はついてきています。1戦目(オーストラリア)、2戦目(イラン)を全力でつぶしにいきます」。初戦からの連勝で弾みをつけ、頂点まで駆け上がるプランを描く。

「AOCチャンピオンになることが僕らの成し遂げるべきこと」とエースの鳥海連志

選手たちもそれぞれ、磨いてきた強みを武器にチームへの貢献を誓う。エースの鳥海連志(プロ車いすバスケットボールプレーヤー)は、「パリ予選後から、ここに向けて強化してきたので、集大成を出します。AOCチャンピオンになることが僕らの成し遂げるべきこと」と言い切る。その達成に向け、鳥海はポイントゲッターを自任し、シュート力に磨きをかけてきたという。

先発起用が濃厚の髙柗義伸(キッズコーポレーション)は、「スタートとしてゲームを作らないといけないので難しいですが、12人を、選手を、代表してゲームに出ます。責任感を持って、しっかりしたスタートを切りたい」と力強く、古澤拓也(WOWOW)はゲームチェンジャーとして、「試合の流れを変える選手でありたいです。目標はチャンピオンになりたいことに尽きます」と意気込む。

パリ予選後、ドイツリーグに移籍した赤石竜我(コロプラ)は、「海外選手の強くて荒いコンタクトへの受け流し方や日本人とは違うバスケへのアジャストは、十二分に学べました」と収穫を挙げる。AOCでは、「1試合目から全開でいき,勝利への執念、執着を見せたいです。チームの勝利につながるなら泥臭いプレーも喜んでやるし、自分が決めるべきときは責任をもって決めたいです」と力を込めた。

ベテラン藤本怜央は「誰よりもハッスルし、エネルギーを発信する存在でありたい」とコメント

「日本を世界の舞台に戻すことが絶対的な使命。それしか考えてこなかったです」と話すのは、5大会連続パラリンピック出場のベテラン、藤本怜央(SUS)だ。韓国など海外リーグにも挑戦しながら自らを鼓舞し、フィジカルも15㎏減量し、下半身も強化した。「連戦でも安定したパフォーマンスを出せています。3ポイントもほぼ止まった状態からでも打てるようになりました。速いトランジションのなかで心拍数が上がっていても決めきるよう鍛えてきました」と胸をはり、「誰よりもハッスルし、エネルギーを発信する存在でありたい」と、活躍を誓う。

なお、AOCには日本女子代表も出場し、2位以内に入って2大会連続となる世界選手権の出場権獲得を目指す。女子は日本も入るディビジョンAがオーストラリア、中国との3チームで2回の総当たり戦を行って順位を決め、同Bは6チームで総当たり戦を行い、1位チームがAの3チームに加わって、準決勝、決勝へと進む方式で行われる。日本は初戦(8日)と11日に中国と、9日と12日にオーストラリアと戦い、決勝戦を目指す。

大会の模様はIWBF(国際車いすバスケットボール連盟)のYouTubeチャンネルでライブ配信が予定されている。男女車いすバスケ日本代表による「世界への挑戦」に、注目だ。

文・写真/星野恭子



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