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  ブラインドサッカーの醍醐味(その2)

ブラインドサッカーの醍醐味(その2)

空間認知力は超人並み? 選手たちはなぜ動けるのか

目標は2020年のメダル獲得。代表チームはすでに始動開始

選手は味方の声による情報とボールの音だけを頼りにプレーしているのかというと、そうではないらしい。日本代表のキャプテンである川村怜は「指示を聞いてからだと遅いんです。確かにそれらの情報は大切ですが、僕たちは頭の中で〝見ている〟んです」と言う。そしてブラサカ創成期から代表として活躍する黒田智成は、「声や風、気配、ユニフォームが擦れる音、すべての要素が頭の中でカチッと組み合わさった時に蹴ったボールはゴールネットを揺らしますね」と言う。代表選手たちの多くは、後天的に病気や事故で視力を失っている。ひとつの感覚を失うと、他の感覚がカバーすべく空間認知能力が発達するのかもしれない。「ブラサカを始めてから、歩くのが早くなり、人にぶつからなくなりました」と川村が重ねる。 では彼らはピッチをどう見ているのだろうか。なぜ行きたい方向に走れるのか。これは人によってさまざまで、上からチェス盤のようにピッチ全体を俯瞰する感覚だという選手がいれば、3D画面の中に自分もいると実感を話す者もいる。二次元と三次元が組み合わさっているという選手もいる。そんな感覚の分野はまだまだ未知なことが多いようだ。 今でこそブラサカは多少は知られてきたが、現日本ブラインドサッカー協会(以下、協会)の設立は02年。01年に現代表理事である釜本美佐子が当時アジアでブラサカ先進国だった韓国に視察に行き、導入を決めた。釜本は言う。「選手に聞いたのです。ブラサカの何が楽しいの? って。そうしたら彼らは言いました。ピッチのなかには自由がある。エキサイティングだ!って」 協会はその後04年に現事務局長である松崎英吾が引き継ぎ、名称を日本視覚障がい者サッカー協会から日本ブラインドサッカー協会に変え、15年にNPO法人化している。ちなみに釜本美佐子は、あの釜本邦茂の実姉だ。 日本は現在世界ランキング8位。1位をキープし続けているのはサッカー王国ブラジル。ブラサカの世界では、サッカーそのものが強い国以外に、福祉が充実している国や、社会主義国が強いといわれている。それまで弱かった中国が北京パラリンピックをきっかけに強豪国になったことはよく知られている事実。理由は国を挙げて強化をバックアップしたからだ。 残念ながら日本はパラリンピックへの出場経験はない。アジア枠はふたつしかなく、ロンドン大会、リオ大会と続けてアジア予選で中国とイランに煮え湯を飲まされているからだ。だが、東京パラリンピックでは開催国として出場権が与えられている。


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