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  パラ水泳のいま、そして未来(その3)

パラ水泳のいま、そして未来(その3)

一般社団法人 日本身体障がい者水泳連盟 常務理事 技術委員長 櫻井誠一さん インタビュー   大切な科学的視点   「障がい者の選手を指導するときに、どういう風にすれば抵抗が少ない泳ぎができるのかを知りたいと、日本水泳・水中運動学会で科学的な研究をしているメンバーに声をかけました。大阪教育大学の生田泰志先生、大阪経済大学の若吉浩二先生などの協力を得て、レース、トレーニングを徹底的に科学の視点から分析しました。障がいとの関係性も含めてです。動作解析、栄養分析、心理分析など、科学的アプローチを障害者スポーツの場にも活用したのです」 その結果、たとえば脳性麻痺の選手は「緊張性不安」の部分で高い数値が出やすいことがわかった。では日頃の練習の時から、緊張を抑える訓練をど取り入れようという検討を開始。また筋収縮が激しいので、練習の間でもマッサージを多く行おう、といった対応も始めた。 身体の使い方の面では、右脚の膝下欠損の選手は右足でのキックができないので、左側に顔をあげて息継ぎをすると、身体が回りすぎてしまう。戻しの時に修正を入れる必要があるので、水の抵抗も大きくなってしまうので、逆に顔をあげよう、といった指導をするようになった。   パラスポーツがもっと注目されるには? という質問に対して、櫻井さんは、 「オリンピック競技の種目の一つとしてパラの競技が入るのが、本当は一番いいと思います。オーストラリアなどの大学の水泳大会では、一般の一〇〇メートル自由形の次は、S9のレースが入っていたりします。神戸の市民大会はパラの選手を全部出して国際公認しています。この方式を広めようと思っていますが、運営に細かい工夫も必要となります。また行政の縦割りの問題も顔をのぞかせます。これからの時代は、イベント事業は上手く仕切れるマネジメントのプロ集団に任せるべきなのでしょう」 「神戸市は、都市経営の優良モデルとして『株式会社神戸市』と言われ、いろいろなことにチャレンジし、成功・失敗を繰り返していました。私自身もあらゆる場面で経営・マネジメントの部分で駆り出されました。実はこのことがとても役立ったと思っています」 大きなストライドで背筋をぴんと立てて歩く櫻井さん。その目指す場所は、2020年のその先であることは間違いない。  


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