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  必修体育に「ボッチャ」を導入~東海大学の試み~

必修体育に「ボッチャ」を導入~東海大学の試み~

体育館に響き渡る、大学一年生たちの楽しそうな声。東海大学の「ボッチャ授業」は、着替えなくてもいい体育の授業。「集い(つどい)力」を高める100分間を覗いてみた。※『パラスポーツマガジンVol.13』(2023年9月発売)に掲載された記事です。

取材・文・写真/編集部

ここでは、ボッチャ経験者が毎年約5000人増えている!

夏休みが目前に迫ったある日の午後。神奈川県平塚市にある東海大学湘南キャンパスは、多くの学生でにぎわっていた。ここは文学部、法学部、教養学部、体育学部、理学部、情報理工学部、工学部等の学生およそ2万人が学ぶ、東海大学のメインキャンパスだ。

「うちの大学では体育の授業で必ずボッチャをやるんです」という学生の声を聞き、今回はその授業の様子を見にやってきた。

東海大学の必修体育(健康スポーツ科目)は「生涯スポーツ理論実習」と「健康・フィットネス理論実習」の2つの授業で構成されている。

2020年の春、新型コロナの拡大で対面授業ができない時期が続いていたため、レポート作成を中心とした遠隔授業に変更されていた。同年の秋ごろから対面授業を復活させるにあたり、感染対策上、身体接触が少なくソーシャルディスタンスもある程度保てるという視点から生涯スポーツ理論実習の種目として3つのニュースポーツが採用された。

地図と参考写真を頼りに決められた時間内でキャンパス内に設けたチェックポイントを回って得点をあげる「ロゲイニング」、日本で高齢者向けに考案された「グラウンド・ゴルフ」、そして「ボッチャ」だ。

「毎年約5000人の1年生が必修体育の授業でボッチャを経験するんです。ほとんどの学生は未経験者なので、運動能力の差があまり出ず、みんながフラットに楽しめるんです」(スポーツプロモーションセンター川邊保孝准教授)

高校までの体育の授業のように、実技で評価をして点数をつけるのではなく、新しいスポーツのおもしろさに触れることに主眼を置いているのが特徴だ。また、大学一年生が受ける授業ということもあり、学生同士や教員とのコミュニケーションを図る能力(集い力)をつけよう、という位置づけの授業でもある。川邊さんは続ける。

「チームを組んでボッチャをやる場合、戦術面で相談したり、あーだこーだ話し合いながら進めなければなりません。驚くほど学生たちは楽しそうにやっていますよ」

柔道金メダリストの塚田さん(中央)もボッチャを指導

着替えなしでOKの体育

授業を見ていて、はじめ違和感があった。体育の授業なのに、みんな普段着のままなのだ。理由を聞くと、

「感染予防のため、更衣室が使えず、着替えなしでの授業への参加をOKとしたんです。スポーツウエアに着替えなくてもできるスポーツの種目なんですね、ボッチャは」

今は着替えたい人は更衣室を使ってスポーツウエアに着替えてもいい、ということにしているそうだが、ある意味、参加への垣根が低く、やりたいと思った時に楽しめるスポーツだといえる。

さて授業はというと、総合体育館の半分を使って行い、学生は40人、一人の教員が指導する。今日の教員は、オリンピック金メダリストの塚田真希准教授。最初にボッチャのルールを説明した後、デモンストレーションを見せる。

「私もまだ勉強しながら指導しているんですが、学生たちと一緒に楽しんでやっています」(塚田さん)

学生たちは、このボッチャの授業をどんな思いで受講しているのだろうか?

「ボッチャをするのは今日が初めて。競技そのものは知ってはいたんですが、こんなに戦略的なゲームだとは思っていなかったです。そしてムチャクチャ楽しかった!」(男子学生)

「普段着でできるのが良かった。着替えるの面倒だし(笑)。授業以外でもやりたいです」(女子学生)とおおむね好評。

ボッチャを授業に導入するのに尽力した内田匡輔教授は、「未来を担う彼らにとって、授業でボッチャを体験したことが、身近な共生社会を考えるきっかけになってくれればうれしいです」と語る。

ボールさえあればどこでも楽しめ、かつ奥が深いアダプテッド・スポーツ、「ボッチャ」。一人でも多くの若者に、その歴史と理念を知ってもらい、その魅力を後世にも伝えていってもらいたいものだ。

私もボッチャ、楽しんでます!(塚田さん)


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