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  悲願の世界一! デフフットサルW杯を制した日本女子代表チーム山本典城監督インタビュー(全3回/第1回)

悲願の世界一! デフフットサルW杯を制した日本女子代表チーム山本典城監督インタビュー(全3回/第1回)

11月9日~18日、ブラジルで開催された第5回ろう者フットサル世界選手権大会(デフフットサルワールドカップ2023)。世界一を決めるこの大会で、日本女子チームが見事に優勝を果たした。代表チームの山本典城監督のインタビューをお届けする。(全3回/第1回)

取材・文/編集部 写真協力/一般社団法人日本ろう者サッカー協会 取材協力/ケイアイスター不動産株式会社

――ワールドカップ初優勝、本当におめでとうございます!

山本典城監督(以下同) ありがとうございます。

――まず、今回の代表チームについて教えてください。

今回の代表選手選考については、デフフットサルの女子は競技人口が少ないこともあって、ある程度限られた選手の中から世界の舞台でも戦えるという基準みたいなものを自分の中で設定していました。もちろんそれは技術的な部分だけではなくて、チームの一員として、チームにポジティブな部分を与えられる選手、ピッチ外も含めて必要な役割があるので、それに達している選手を最終的に12名選びました。

やはり一番大きな問題として、女子の場合、デフサッカーと掛け持ちをしている選手が今まで多かったんです。それだと大会スケジュールの問題などがあって、両方に参加するのはなかなか難しいという私自身の考えがありました。コンディションの問題やケガのリスクも増えます。そういった点で、選手に常々言ってきたことは、フットサルで結果を出すには、やっぱりサッカーと掛け持ちでやっているようではなかなか難しいということです。結果を出すというところを考えれば、フットサル選手として成長するためには日常的にフットサルと向き合わないといけないですし、サッカー選手として成長するんだったらサッカーと向き合わないといけない。そこを両方やるっていうのは、やっぱり難しいと思うんです。今回の12名の選手に関しては、全員がフットサルで結果を出したい、そのために少なくとも前回のワールドカップから4年間、積み上げてきた選手たちです。

――山本監督の中ではどのようなチーム、どうやって勝っていくチームにしようと思っていたのでしょうか。

今大会に関しては4年前の経験も踏まえて、日本の強み、それは自分の中では明確になっていたんですけど、攻守の切り替え、ディフェンスもオフェンスもしっかり組織として連動していけるという強みを生かしたいと考えていました。それと他国と比べると日本はチームとしての活動日数が多く、その差が生まれると思っていました。日本の選手たちは金銭的負担も覚悟して、勝つために、世界一を目指したいということで、明確に目標を設定して、じゃあそのために必要なことは何かっていうところで、活動頻度も含めてトレーニング環境を良くしたり、合宿も増やす努力をしました。世界一を取るために必要なことを、軸をぶらさずに選手にも理解してもらってやっている部分が大きいですね。組織的な部分の落とし込みということころでは、間違いなく他の国よりは積み重ねたものが大きかったですし、実際にそれが今回の結果を生んだ一番の要因だと思っています。

――他のチームと比べて、練習量も多く、練習でやってきたことを本番で出そうという。

はい、そうですね。ワールドカップ期間中に新しいことをやるのではなく、積み重ねてきたものを試合でいかに出せるか。あとは相手との相性だったり、守り方や攻め方もいろいろな形がある中で、どれだけ自分たちがやってきたものをベースに、相手を考慮したうえで引き出しから何を選ぶかという、そこのチョイスを増やす積み重ねをやってきたのと、 選手それぞれがその瞬間瞬間、いい選択、判断ができるためのトレーニングを積み重ねてきました。

たとえば、ヨーロッパの選手は体格が大きくて、実際今大会も3チームと戦って1勝2分けと苦戦したんですけど、これまでは強引に体を使って来る相手に力負けしていた部分があったところを、フィジカルの部分も積み上げてきて、我慢しながらディフェンスをする中で、しっかりと自分たちの形でたくさんチャンスを作って、相手よりも多くゴールを奪う。そこがようやく形として出せた大会だったかなと思っています。

――そのヨーロッパでチャンピオンとなった強豪、イングランドが初戦の相手でした。

今回、当初8チームが参加する予定で、予選リーグは2つのグループに4チームずつが分かれて戦うスケジュールでした。ところが直前でケニアとガーナのアフリカ勢2チームが不参加となり、予選は6チームの総当たりで行われることになったんです。初戦相手のイングランドは同じグループで、本来なら予選の3試合目にあたる予定でした。なのでその前の2試合で決勝トーナメントの進出を決めてからイングランドに臨むという青写真を描いていたんですけど。

――難しい初戦で、しかも難敵のイングランドに3対0で見事勝利しました。

勝って一気に波に乗れたというか。8年前、タイのワールドカップでの最後、順位決定戦で日本はイングランドに負けて終わっているということも含めて、自分たちが積み上げてみきたものが、しっかりと世界で通用することがわかりました。そこの自信を持つには、もう十分すぎる結果と内容だったかなと思います。

もちろん、初戦の相手としては、ちょっと嫌でした。初戦の難しさというのももちろんありましたし、イングランドは格上だと思っていましたので。ヨーロッパ選手権とかの映像を見てスカウティングしている中でも、個々の技術の高さは日本より上だと思っていました。それと、日本にとってネガティブな部分は、国際大会での経験があまりにも少ないことです。ヨーロッパは毎年ヨーロッパ選手権をやっていて、そういう緊張感のある戦いをやっていますし、日本は体の大きい相手とやる経験が少ないがゆえに、やっぱり始まってみないと選手たちがどこまで相手からプレッシャーを感じるかというところが、あまり読めなかった部分がありました。そういうことも含めて、初戦にイングランドとやって失点もなく、いい形で結果を出せたっていうのは、本当に今大会の一つの大きなポイントだったと思います。

――続く予選の2試合目はドイツと0対0の引き分け。

これはタラレバの話なんですけど、今考えると結果的に試合の入り方がよくありませんでした。イングランド戦に関しては、やっぱりガンガン自分たちで前からプレスをかけていくことができたのですが、ドイツ戦に関しては、相手が始まってすぐにかなり引いた状態でディフェンスをし始めたので、余裕を持ってボール保持ができてはいたものの、その状態からリスクをかけて何かを選択するっていうところをやらなかったんですね、私の選択として。その部分が、ディフェンスでもオフェンスにおいても、少し選手たちのプレーを消極的にしてしまったかなと思います。引いた相手に付き合ってしまったというか。試合の入り方、自分の伝え方がうまくいかなかったところは、反省の多い試合だったと思っています。

ドイツも日本のイングランド戦を見て、多分引いてきたと思うので、そういう部分では2試合目にして日本の見られ方っていうのが一気に変わった感触のある試合でもありました。とはいえ、やはりずっと引いていた相手に対してゴールを奪えなかったっていうところは、今後の課題として持ち帰って来てはいますね。

勝つためにはリスクを背負わないといけない部分もあるけれど、自分の中でドイツとは最低でも引き分けて勝ち点1を取れば全然悪くないっていうのが頭のどこかにあって。もちろん勝ちに行きましたけど、引いた相手に対してもっとどこかでリスクを背負ってチャレンジしないといけない部分があったのは確かでしたね。それを選手たちにはっきりと伝えることができませんでした。(第2回へ続く)


山本典城(やまもと・よしき)
大学までサッカーをプレーした後、フットサルに転向。2013年からデフフットサル日本女子代表チームの監督を務める。今回のワールドカップでチームを優勝へと導き、最優秀監督賞を受賞した。1975年生まれ、奈良県出身。



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