
アメリカ、オーストラリアを迎え、車いすラグビー「SHIBUYA CUP 2025」開催
4月18日から3日間、車いすラグビーの国際大会「SHIBUYA CUP 2025」が開催された。この大会は東京2020パラリンピックのレガシーとしてスタートし、今年で3回目を数える。開催場所は、まさに東京2020パラリンピックで車いすラグビーの試合会場になった国立代々木競技場第一体育館だ。
大会の特徴は、若手育成のための国際大会であること。今大会には、昨年パリパラリンピック決勝戦で日本が撃破したアメリカ、同じく準決勝で対戦し銅メダルを獲得したオーストラリアが来日。それぞれ、ロサンゼルス大会を見据えたフレッシュなメンバーが顔を揃えた。
試合は、3カ国による総当たり戦を3日間行い、勝敗数によって順位が決定する。日本は、アメリカに2敗、オーストラリアには2勝して最終日に臨んだ。ちなみにアメリカはオーストラリアにも2勝していた。

先に対戦したのはアメリカだ。日本は今大会キャプテンを務める橋本勝也、中町俊耶というパリパラリンピック経験者に、壁谷友茂、鈴木康平のラインナップでスタート。ティップオフを勝ち取ったアメリカがそのままトライを決めて先制すると、第1ピリオド9-13とリードを許した。続く第2ピリオドで19-25と点差を広げられ、後半第3ピリオドでは33-37と追いかけるも、最後は44-51で敗れた。
アメリカで光ったのは、18歳で3.5点のザイオン・レディントン。今大会のアメリカ一長身のメイソン・シモンズとともにロングパスからのトライを決めていた。一方、日本でも今大会最年少の19歳、青木颯志(2.5点)も、プレータイムは多くないものの活躍を見せた。後半アメリカを猛追する中で、壁谷への正確なパスでトライをアシストし、相手ディフェンスの進路を塞いで味方の花道を作った。
最終戦となった日本対オーストラリアの試合は、オーストラリアに先制を許すが、第1ピリオドは13-11とリードし、その後も順調に点差を広げて51-48で日本が勝利。最終日の結果から、1位は全勝のアメリカ、2位に日本、3位オーストラリアとなった。




今大会のベストローポインターに日本の鈴木康平、ベストミドルポインターにはオーストラリアの女子選手リリアナ・プルチャ、ベストハイポインターには同じくオーストラリアのアンドリュー・ホロウェイ、MVPは優勝したアメリカの2.5点選手、アレックス・パボンが選出された。
青木は、昨年11月に行われた同大会に続いて2度目の出場。「今大会では、しっかり顔を上げてプレーすることができました。国際大会では(普段とは異なる)体格の大きい選手が多く、難しい局面もあってまわりが見えなくなることも多い。でも、以前よりもパスを出すべきところ、走るべきところなどの判断ができるようになりました」と、手応えを語った。
中谷英樹ヘッドコーチも「SHIBUYA CUPは若い選手にとって、絶好の成長機会。青木は、まだまだこれから伸びていく選手。クラス2.5点の青木には、ハイポインターに対して瞬間的に1枚でもディフェンスをしたり、ハイポインター並みのクイックネスが必要になる。今大会でも、アメリカのパボンや女子のサラ(アダム、2.5点だがコート上では新ルールにより1.0点マイナス)など、ミドルポインターの活躍が目立っていた。どんどん仕掛けていく選手に成長してほしいと思っています」
今大会、アシスタントコーチとしてベンチから試合を見守っていた日本代表キャプテンの池透暢も青木を含む若手選手について「スキル、ハート、すべてが成長していかなくてはいけない段階。とはいえ、国際クラス分けも行われ、世界トップクラスの国と戦えるSHIBUYA CUPの意義は大きいです」と、若手の経験、情報を底上げすることができる大会のメリットを強調していた。
また、アシスタントコーチという立場からは「どれだけスタッフが選手を支えているかを改めて感じることができました。パリ大会まではアナリストという立場で関わってきた中谷ヘッドコーチが、その経験をもとに采配する姿、有効なタイムアウトの取り方などカードを切るタイミングなどを間近に見られて、非常に学ぶところがありました」
アメリカの18歳レディントンも急成長を見せ、日本の橋本に並ぶハイポインターに化けるポテンシャルがある。オーストラリアにも、ライリー・バットやクリス・ボンドら主力選手と組み合わせることで、強力なラインナップを形成する20代選手が複数存在する。アジアオセアニア選手権、アジアパラ競技大会、世界選手権と、重要な国際大会が待っている。SHIBUYA CUPで暴れた選手がこの先どんな活躍を見せてくれるか、楽しみだ。

文・写真/宮崎恵理