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パラスポーツマガジンの最新ニュース
- 悪天候の中、国内外から45選手が参戦。「第2回中部障害者オープンゴルフ選手権」
悪天候の中、国内外から45選手が参戦。「第2回中部障害者オープンゴルフ選手権」
- 6月10日、日本ラインゴルフ倶楽部(岐阜県可児市)にて、「第2回中部障害者オープンゴルフ選手権」が行われた。この大会は2003年に地方振興障害者ゴルフ大会として沖縄で始まった行事の一環で、九州、沖縄、中国、四国、北海道、東北、北陸と各地を回り、中部地方では昨年より行われている。同コースで前日に行われていた「第25回日本片マヒ障害者オープンゴルフ選手権」、11月に行われる「日本障害者オープンゴルフ選手権」とともに、国内で行われている公式公式大会の一つで、世界ランキング(WR)の対象試合となる。国内選手のみならず、韓国、香港、マレーシア、台湾からの参加選手も含め、45名の選手が悪天候の中プレーした。 悪天候ながらグリーンの状態は良く、選手たちは実力をいかんなく発揮した 当日は気温が低く、強い雨という悪条件の中、雨天中断を挟んで18ホールで争われた。ティーグラウンドやグリーンは雨の影響がほぼない素晴らしいコースだったが、フェアウェイはところどころに水たまりが見られ、川のようになっている箇所もあるほどの雨量だった。 優勝は、前半を32、後半を38の76でまとめ、2位に3打差をつけた吉田隼人。昨年パラ陸上を引退した山本篤は81で4位となった。 「76」で優勝した吉田隼人 パラ陸上で活躍した山本篤は4位に入賞 香港から参戦したアンドレアス・マ コースの斜面も難なく自走で移動し、ナイスショットでグリーンに乗せた大村実法 片腕でショットを打つ有迫隆志 義手を使ってプレーする小山田雅人 片足でプレーする石原隆治 車いすの部の選手は、ボランティアプレーヤー(手前)と一緒に回る。ボランティアプレーヤーは自分でプレーもしながら、車いすの選手が合わせた位置にティーアップするなどの手伝いもする 片麻痺の選手もプレー この日は、悪天候により世界ランキング対象選手のみの試合となったが、通常、障害総合の部(上肢切断、下肢切断)、片マヒの部、車いすの部、女子の部、知的障害の部、軽度障害の部の6つのカテゴリーがあり、それに加え、ボランティアの部も設定されている。 協会の大きな目標の一つが「パラリンピック競技採用」だ。そのために必要な条件の一つに、五大大陸で一定の競技人口が確保されていることがある。女性の競技人口が全体の約半分を満たさねばならい、という大きな課題は残るものの、「障害を越えて、誰もがゴルフを楽しめる環境づくり」を確実に実践している。興味のある方は扉を開いてみてはいかがだろうか。 日本障害者ゴルフ協会 https://dga-japan.com/ 写真・文/吉村もと
- 期待の選手が躍動!2025ジャパンパラ陸上競技大会
期待の選手が躍動!2025ジャパンパラ陸上競技大会
- 6月7日~8日、宮城県仙台市の「弘進ゴムアスリートパーク仙台」で、2025ジャパンパラ陸上競技大会が開催された。すでに九州では梅雨入りしていたが、仙台市は両日ともに晴天の夏日。気温、湿度の高いコンディションの中、328名の選手が躍動した。 今年は、9月にインド・ニューデリーでパラ陸上競技世界選手権が、11月には東京でデフリンピックが開催される。デフリンピック出場内定を決めた選手たちや、この大会でパラ陸上の世界選手権の派遣標準記録突破を目指す選手たちが集まった。 デフは世界トップレベルの短距離陣に注目! デフ陸上短距離界の日本の第一人者・佐々木琢磨は、100m優勝、200m2位。400mリレーも含め、11月の東京デフリンピックでの三冠獲得が期待される デフリンピックの陸上競技は、メダル獲得が期待される競技の一つ。前回大会100mで金メダルを獲得し大会2連覇を目指す佐々木琢磨は、メインである100m、200m、リレーに出場。個人種目としては100mで優勝、200mでは山田真樹に次いで2位となった。 聴覚障害・男子100mx4リレーの日本代表チームでは、昨年、41秒15で世界新記録を樹立している。リレーの世界記録は、1977年にアメリカが手動計測による41秒1以来、更新されていなかった。日本代表がマークした記録は電動計時によるもので、これが公式に聴覚障害の世界記録として認定されたということになる。 今大会、日本代表チームは、1走に坂田翔悟、2走に荒谷太智、3走に山田、アンカーに佐々木で、このメンバーは内定後に急遽決まった初顔合わせだった。42秒45の記録で、同じく聴覚障害の仙台大学チームを下した。 「デフリンピック初出場の荒谷が入り、ジャパンパラ会場に入ってから少し練習しただけでしたので、まずはしっかりバトンパスを成功させることをテーマに走りました」(佐々木) 「日本代表に選ばれて、初めて代表ユニフォームを着て出場しました。無事にバトンを渡すことができましたが、本番でも誇りを持って走りたい」(荒谷) 「高校時代からリレー経験がありますが、日本代表として走ることで自然とパワーがもらえました。11月のデフリンピック本番では、伝説のレースだったと言われるように。そのスタートが切れたかな、と思っています」(山田) 「日本代表ユニフォームを着用したことで、デフリンピックが開催されるということを、みなさんに知っていただけたかと思います。今後も、いろんな人に見てもらえるようにアピールしていきたいです」(坂田) 新人・荒谷は、佐々木が直接スカウトしたのだとか。 「ある合宿で、廊下を歩いているときに、何だかいい匂いがすると思ったら、荒谷がドミノピザを食べていた。それで声をかけて、一緒に練習するようになりました。声をかけて、本当に良かったです(笑)」(佐々木) 今後は、合宿でメンバー同士のバトンパスの精度を高め、11月のデフリンピック本番では「世界がまだ出していない40秒台、あるいは40秒を切る世界記録に挑戦したい」と意欲を見せた。 デフ女子400mリレー。日本代表チームの三走・今野桃果(右)からアンカー・生井澤彩瑛(中右)へのバトンリレー 一方、聴覚障害女子のリレーは、デフリンピックでは2016年に行われたブルガリアの世界選手権以来、9年ぶりの出場。今大会には、今野桃果、生井澤彩瑛、門脇翠、遠藤心音が出場し、51秒10でフィニッシュした。 期待の若手!短距離の吉田彩乃、やり投げの小松紗季 高校を卒業し、練習環境を変えたことで急成長を見せた、脳性まひ車いすクラスの吉田彩乃 パラ陸上では、昨年、パリパラリンピックに初出場した脳性まひクラス女子T34で100m、800mに出場した吉田彩乃が、活躍を見せた。同じクラスの小野寺萌恵が、どちらの種目でも日本記録を保持しているが、その小野寺を抑えて2種目とも優勝。レース展開で駆け引きも重要となる800mでは、レーン合流後に小野寺の後ろにピタリとつけた吉田が、最終周第3コーナーを回るあたりで小野寺を捉え、そのまま抜き去り2分16秒55の大会新記録でフィニッシュした。 「今年、高校卒業後の4月から岡山にあるワールドACの所属となり、練習環境がとても充実したことが、この結果に結びついています」 神奈川県横浜市出身で、高校時代までは母と2人で練習してきた吉田。そこから就職し、パラ陸上競技の日本代表選手が在籍するワールドACで、専門のスタッフやコーチによる指導が受けられるようになったことで急成長している。 「スタートも、持久力も上がってきましたし、使っているレーサーの調整などもしていただいています。それで自己ベストを大幅に更新することができました」 今は、小野寺の持つ日本記録を更新し、真の日本一になること、さらに数年かけて世界一を目指したいと語った。 ”借り物”のやりと投てき台で世界選手権派遣標準記録を大幅に超える記録を出した、車いす女子F54クラスの小松沙季。パラカヌーから転向したばかりの選手だ もう一人、今年華麗なデビューを飾ったのが、車いすのやり投げ女子F54クラスの小松沙季だ。もともとパラカヌー選手として活躍していたが、パラ陸上のやり投げに転向。今大会1投目でマークした16m99は、世界選手権派遣標準記録の15m04を大幅に超えるビッグスローだった。 「4月の日本選手権以降、スイングスピードの強化として1kgのメディシンボールを購入し、それを早く投げる練習をしてきたことが成果につながったのかな」 と、淡々と語る。まだまだパラ陸上を始めたばかりで、専用のやりも、投てき台も所有せず、大会が用意したものを使用して、この記録を出したのだった。 「やりも投てき台も、もっと自分のフォームやスタイルを見極めてから、しっかり選んで購入したいと思っています」 知的障害のやり投げ女子T20クラスで世界新記録を出した堀玲那 そのほか、知的障害のやり投げで女子T20クラスの堀玲那が42m17をマーク。これは日本新記録とともに、Virtus(国際知的障害者スポーツ連盟)公認の世界新記録だった。本人は、「パラ陸上T20クラスでの世界記録を目指したい」と、さらなる意欲を見せた。 取材・文/宮崎恵理 写真/吉村もと
- 丸大食品株式会社と TEAM JAPANが パートナーシップ契約を締結
丸大食品株式会社と TEAM JAPANが パートナーシップ契約を締結
- (公財)日本オリンピック委員会(JOC)と(公財)日本パラスポーツ協会・日本パラリンピック委員会(JPC)は、丸大食品株式会社と TEAM JAPAN パートナーシップ契約を締結しました。 丸大食品株式会社は、 ロサンゼルス 2028 オリンピック・パラリンピック競技大会終了後の 2028 年 12 月末まで、TEAM JAPAN、JOC 及び JPC に関する呼称やマークの使用などをはじめとした権利を、マーケティング活動や CSR 活動等に行使することが可能になります。 ■森 和之 JPC 会長 コメントスポーツと食を通じて、長きにわたりスポーツ振興を支援いただいている丸大食品株式会社様に JPC オフィシャルパートナーとして協賛いただけますことを、大変光栄に思います。障がいのあるアスリートたちが様々な工夫をしながら限界に挑むパラリンピックは、その魅力を通じて世の中の人たちへ気づきを与え、共生社会の実現を推し進めるものです。丸大食品株式会社の皆様と協働し、TEAM JAPAN のアスリートの支援や、スポーツを通じて誰もが力を発揮し活躍できる共生社会を目指すパラリンピックムーブメントの推進をこれからも行って参ります。
- 日本勢活躍!「ワールドトライアスロン パラシリーズ横浜2025」
日本勢活躍!「ワールドトライアスロン パラシリーズ横浜2025」
- 5月17日、「ワールドトライアスロン パラシリーズ横浜2025」が、山下公園周辺の特設会場で開催された。東京2020パラリンピック、パリ2024パラリンピックのメダリストなど、トップ選手が世界から集結するパラトライアスロン恒例の国際大会だ。 パラトライアスロンは、スイム750m、バイク21.226km(横浜大会では、4.245km×5周)、ラン5km(横浜大会では、車いすクラスのみ2.5km×2周、それ以外のクラスは1.67km×3周)で競われる。トランジションと呼ばれる、各パートの切り替えをどれだけ短時間で行えるか、それぞれの持ち味の種目をどう活かすかが、勝負のカギとなる。 当日は、気象情報通り、前日未明からの雨が降っていた。6時50分のスタート時、気温、水温ともに20度。幸い、風は強くない。気持ちのいい晴天ではないことを、逆にチャンスととらえる選手が多いのは、パラトライアスロンに出場する選手の特徴でもある。シーズン初めで自国開催となる日本人選手の活躍を楽しみに、早朝から観客も集まっていた。 パリパラリンピック以降、パラトライアスロン日本代表のヘッドコーチに福井英郎氏が就任。福井HCは2000年シドニーオリンピックに出場した経験を持つ。新体制でスタートした中での横浜大会である。 シーズン序盤となる自国開催で、日本人選手が活躍した。 PTS2女子では、秦由加子が2位、パラ陸上競技から転向してきた保田明日美が3位。PTS4女子では、谷真海が3位。 視覚障害男子PTVIで6位に入った山田陽介(ガイド:寺澤光介、写真手前) 男子では、PTWC(車いす)で木村潤平が3位、PTS2で中山賢史朗が6位。視覚障害の男子PTVIでは、樫木亮太(ガイド:水野泉之介)が5位、山田陽介(ガイド:寺澤光介)が6位。もっとも出場人数の多いPTS5男子(全12名)では、佐藤圭一が10位、安藤匠海が11位、パラ陸上競技でも活躍経験のある永田務はスイムから上がったところで途中棄権した。同じく出場人数が10名のPTS4男子では、東京パラリンピックで銀メダルを獲得している宇田秀生が5位、金子慶也が6位に入った。 PTS2女子で2位の秦由加子 昨年、パリパラリンピック直前の練習中に落車事故で右肘骨折という大怪我を負った秦由加子は、今年1月に治療のためのワイヤーを抜く手術をし、2月に練習を再開させたという。秦はパラトライアスロンが正式競技となった2016年リオ大会からパラリンピックに出場しているベテラン。パラ陸上競技から転向してきた保田明日美の存在は大いに刺激になっていると語る。 「とくにランはとても参考になります。動画を撮影させてもらって、それを元に練習もしています」 同じ大腿義足のアスリートとして、走る義足についても情報を共有しているとか。今大会では、ランのラストラップで保田に捉えられたが、その直後のコーナーで保田が転倒し、それぞれ5位、6位となった。 その安田は、「雨天での練習はしていたが、こんな厳しい条件でのレースは初めて。ランパートの最後で秦さんの背中が見えて抜き去ったのは良かったけれども、もう、足がもつれてしまいました。やはり、経験の差がまだまだ大きい」と、振り返った。 PTWC(車いす)男子3位の木村潤平 新体制となったチームの力を今まで以上に感じていると語るのは、車いす(PTWC)男子の木村だ。 「世界のレベルがどんどん上がっている中、マシンの調整、とくにバイクの調整では専門のメカニックが細かく対応してくれる。ベストな調整を施したバイクに、エンジンとなる自分の体をいかにフィットさせ、スキル、フィジカルを向上させていくか。この両軸がないと、世界には勝てないが、シーズン序盤のレースですごく手応えを感じた」 雨の中、1着の選手が実はバイクでの周回ミスにより失格となった。 「沿道でのスタッフからの情報は入っていたが、諦めずに走ることで3位という結果を手に入れられた。今回はラッキーではあるが、新体制でのジャパンチームのメリットを、すごく感じられたレースでした」 と、新チームへの期待とともに、将来を見据えている。 オリンピアンである福井HCが率いるパラトライアスロンチーム。オリンピックとパラリンピック双方の日本代表チームが連携し、一つのジャパンチームとして機能させる方針だという。 「まずはスタッフ間の情報共有からスタートしました」 種目ごとの専門コーチなどの意見や分析を取り入れながら、オリ・パラの一体感を高めて、3年後のロス、7年後のブリスベンに向かっていく。 取材・文・写真/宮崎恵理
- アメリカ、オーストラリアを迎え、車いすラグビー「SHIBUYA CUP 2025」開催
アメリカ、オーストラリアを迎え、車いすラグビー「SHIBUYA CUP 2025」開催
- 4月18日から3日間、車いすラグビーの国際大会「SHIBUYA CUP 2025」が開催された。この大会は東京2020パラリンピックのレガシーとしてスタートし、今年で3回目を数える。開催場所は、まさに東京2020パラリンピックで車いすラグビーの試合会場になった国立代々木競技場第一体育館だ。 大会の特徴は、若手育成のための国際大会であること。今大会には、昨年パリパラリンピック決勝戦で日本が撃破したアメリカ、同じく準決勝で対戦し銅メダルを獲得したオーストラリアが来日。それぞれ、ロサンゼルス大会を見据えたフレッシュなメンバーが顔を揃えた。 試合は、3カ国による総当たり戦を3日間行い、勝敗数によって順位が決定する。日本は、アメリカに2敗、オーストラリアには2勝して最終日に臨んだ。ちなみにアメリカはオーストラリアにも2勝していた。 オーストラリア戦の橋本勝也(左) 先に対戦したのはアメリカだ。日本は今大会キャプテンを務める橋本勝也、中町俊耶というパリパラリンピック経験者に、壁谷友茂、鈴木康平のラインナップでスタート。ティップオフを勝ち取ったアメリカがそのままトライを決めて先制すると、第1ピリオド9-13とリードを許した。続く第2ピリオドで19-25と点差を広げられ、後半第3ピリオドでは33-37と追いかけるも、最後は44-51で敗れた。 アメリカで光ったのは、18歳で3.5点のザイオン・レディントン。今大会のアメリカ一長身のメイソン・シモンズとともにロングパスからのトライを決めていた。一方、日本でも今大会最年少の19歳、青木颯志(2.5点)も、プレータイムは多くないものの活躍を見せた。後半アメリカを猛追する中で、壁谷への正確なパスでトライをアシストし、相手ディフェンスの進路を塞いで味方の花道を作った。 最終戦となった日本対オーストラリアの試合は、オーストラリアに先制を許すが、第1ピリオドは13-11とリードし、その後も順調に点差を広げて51-48で日本が勝利。最終日の結果から、1位は全勝のアメリカ、2位に日本、3位オーストラリアとなった。 優勝したアメリカチーム 若手中心で挑んた日本チームは準優勝 3位のオーストラリアチーム MVPを受賞したアメリカのアレックス・パボン(右)。パボンは両手欠損のため、メイソン・サイモンズ(左)がサポート 今大会のベストローポインターに日本の鈴木康平、ベストミドルポインターにはオーストラリアの女子選手リリアナ・プルチャ、ベストハイポインターには同じくオーストラリアのアンドリュー・ホロウェイ、MVPは優勝したアメリカの2.5点選手、アレックス・パボンが選出された。 青木は、昨年11月に行われた同大会に続いて2度目の出場。「今大会では、しっかり顔を上げてプレーすることができました。国際大会では(普段とは異なる)体格の大きい選手が多く、難しい局面もあってまわりが見えなくなることも多い。でも、以前よりもパスを出すべきところ、走るべきところなどの判断ができるようになりました」と、手応えを語った。 中谷英樹ヘッドコーチも「SHIBUYA CUPは若い選手にとって、絶好の成長機会。青木は、まだまだこれから伸びていく選手。クラス2.5点の青木には、ハイポインターに対して瞬間的に1枚でもディフェンスをしたり、ハイポインター並みのクイックネスが必要になる。今大会でも、アメリカのパボンや女子のサラ(アダム、2.5点だがコート上では新ルールにより1.0点マイナス)など、ミドルポインターの活躍が目立っていた。どんどん仕掛けていく選手に成長してほしいと思っています」 今大会、アシスタントコーチとしてベンチから試合を見守っていた日本代表キャプテンの池透暢も青木を含む若手選手について「スキル、ハート、すべてが成長していかなくてはいけない段階。とはいえ、国際クラス分けも行われ、世界トップクラスの国と戦えるSHIBUYA CUPの意義は大きいです」と、若手の経験、情報を底上げすることができる大会のメリットを強調していた。 また、アシスタントコーチという立場からは「どれだけスタッフが選手を支えているかを改めて感じることができました。パリ大会まではアナリストという立場で関わってきた中谷ヘッドコーチが、その経験をもとに采配する姿、有効なタイムアウトの取り方などカードを切るタイミングなどを間近に見られて、非常に学ぶところがありました」 アメリカの18歳レディントンも急成長を見せ、日本の橋本に並ぶハイポインターに化けるポテンシャルがある。オーストラリアにも、ライリー・バットやクリス・ボンドら主力選手と組み合わせることで、強力なラインナップを形成する20代選手が複数存在する。アジアオセアニア選手権、アジアパラ競技大会、世界選手権と、重要な国際大会が待っている。SHIBUYA CUPで暴れた選手がこの先どんな活躍を見せてくれるか、楽しみだ。 会場ではラグ車試乗体験などのイベントが行われた 文・写真/宮崎恵理
- アジア記録3、日本記録23、大会記録36!パラアスリートが躍動した「第36回日本パラ陸上選手権大会」
アジア記録3、日本記録23、大会記録36!パラアスリートが躍動した「第36回日本パラ陸上選手権大会」
- 4月26日から2日間の日程で、パラ陸上の日本一決定戦、「日本パラ陸上競技選手権大会」が愛媛県松山市のニンジニアスタジアムで行われた。約250名のアスリートがそれぞれの目標に挑み、好天にも後押しされ、多くの好記録が誕生した。2日目は風が強く吹く時間帯もあり、追い風参考記録も多数あったなか、2日間でアジア記録が3、日本記録が23、大会記録36が更新された。 女子100mで15秒55、走り幅跳びでは4m88と、自らの持つ2つのアジア記録を更新した兎澤朋美 兎澤朋美(T63・片大腿義足/富士通)は女子100mで15秒55をマークし約4年ぶりに、走り幅跳びでは4m88(+1.5)を跳び3年ぶりに、自らの持つ2つのアジア記録を塗り替えた。 シーズン初戦での快挙に、100mについては、「やっと更新できてホッとした。(練習の)方向性は間違っていないと確認できた」と話した。走り幅跳びについては追い風参考記録ながら3回目には4m96(+3.5)もマークし、ここ数年目標に掲げている5m越えが、「今日、すごく具体的に現実的になったなと、ひとつ手応えは得られた。いい流れのまま今シーズン走り抜けられるようにしたい」と、笑顔ながら力強く言い切った。 女子砲丸投げの堀玲那(F20)は、12m81を投げて自身のアジア記録を34㎝更新 もうひとつのアジア新は女子砲丸投げで、堀玲那(F20・知的障害/WORLD-AC)が2投目に12m81を投げ、自身が2023年に作ったアジア記録を34㎝伸ばした。 「公式戦で12m後半を投げられていない弱さを感じていたし、自己ベストも2023年からできていなかったので、本当にホッとした」と笑顔を見せた。今年4月から岡山市のパラ陸上実業団、World-ACに所属したばかりの堀。「チームの一員として、初戦でしっかり自己ベストを出せたことは本当に嬉しい」と語り、さらなる飛躍を誓った。 松本武尊(T36)は男子100mで自身の記録を0秒1更新する12秒03の日本新記録で、9月に行われる世界選手権の派遣標準記録を突破した 今大会は、9月にインド・ニューデリーで開幕する世界選手権の代表選考会のひとつにも位置付けられている。多くの選手が派遣標準記録に挑むなか、松本武尊(T36・脳原性まひ/ACKITA)は男子100mで12秒03(+2.0)派遣標準を突破。同時に、自身のもつ日本記録を0秒1、塗り替えた。 しかし本人は、「派遣標準や日本新は頭になく、とにかく11秒台を出さなければと思っていたので悔しい」と残念がった。スタートがやり直しとなり、「1回目のピストルの時はすごくスタートがうまくいった。それでも、2回目は接地がちょっと外側すぎて遅れた」と振り返り、「11秒台が近づき、モチベーションがあがった」と前を向いた。 松本は専門種目の400mではすでに世界選手権の派遣標準をクリアしており、今季は世界選手権でのメダル獲得が大きな目標だ。さらに、4年後のロサンゼルスパラリンピックも見据え、増量による肉体改造にも挑んでいる。昨年春から約10㎏増量し、「疲れなくなったし、体幹が強くなって走りが安定してきた」と効果を語る。また、昨年から本格的に取り組みだした走り幅跳びでも5m9(+2.0)を跳び、自身がもつ日本記録を9㎝更新した。同クラスの世界記録は6m05、アジア記録は5m75(*)と世界とはまだ差があるが、多様な種目に挑戦することで、「陸上競技をできるだけ長く楽しみたい」と意欲的だ。(*いずれも、2025年4月27日時点) 大会期間中には「ブレードランニングクリニック in 愛媛」「ブラインドランナーの観戦・体験会ツアー」が開催され、参加者は義足で走る体験を楽しんだ 大会期間中には、パラ陸上の体験会も開かれた。初日は走るためのスポーツ義足を用いた「ブレードランニングクリニック in 愛媛」が、2日目は「ブラインドランナーの観戦・体験会ツアー」が行われ、愛媛県内からを中心に約10名が参加した。 「ブレードランニングクリニック in 愛媛」では、希望者にはスポーツ義足が貸し出され、現役の義足アスリートや義肢装具士など専門家の指導のもと、ランニングを楽しんだ。その後、アスリートたちを囲んだ交流会も行われ、笑顔あふれる時間が流れた。 取材・文/星野恭子 写真/吉村もと
- 未来ある子どもたちを応援するプロジェクト「O-EN KIDS チャレンジ陸上アカデミー」開催
未来ある子どもたちを応援するプロジェクト「O-EN KIDS チャレンジ陸上アカデミー」開催
- 4月13日、東京・夢の島競技場で「O-EN KIDS チャレンジ陸上アカデミー supported by OPEN HOUSE」が開催された。これは、未来ある子どもたちを応援するプロジェクトで、今年2回目の開催である。 当時はあいにくの雨のため、急遽、室内でのプログラムに変更された。第1部は、今年3月にパラスノーボード世界選手権のバンクドスラロームで優勝した小須田潤太(オープンハウスグループ所属)による、心のバリアフリー特別教室。第2部は、子ども用レーサー(陸上競技用車いす)と、バスケ車(車いすバスケットボール用車いす)に実際に乗って楽しめるアクティビティ、第3部には楽しみながらユニバーサルデザインを学ぶモリサワUDフォント特別教室が実施された。 集まったのは、障がいのある子ども4名を含む、子ども6名とその家族。「みなさ〜ん、こんにちは!」。小須田の元気な大声が、室内に響き渡る。小須田は、2012年、21歳のときに交通事故で右足大腿部を切断。義足で走るクリニックに参加したことでパラ陸上競技に取り組み、2021年に開催された東京パラリンピックに初出場した。陸上と並行してパラスノーボードにも取り組み、2022年北京パラリンピックに出場。現在はスノーボードに専念し、今年3月、世界選手権での金メダル獲得へと急成長を果たしている。 小須田は、子どもの頃のこと、交通事故で義足になった時のこと、パラ陸上競技を始めたきっかけになったメダリストの山本篤さんのこと、そしてパラスノーボードでの取り組みなど、熱く語った。 オープンハウス所属のパラスノーボード選手・小須田潤太が自身の経験をスピーチ。参加者に自らの義足を触ってもらった 「みんな、今日は僕の義足に思い切り触ってもらいます」。そう言って、陸上競技用の義足、スノーボード用の義足、さらに、本人が日常的に使用している義足を、その場で外して集まった参加者たちに順番に触ってもらった。 小須田の義足に触れる、自身も義足ユーザーの小宮佑都さん(中央)とその家族 「スノーボード用は、すごく重たいんですね」「ロボットみたいだ〜」。大人も子どもも、それぞれの義足を両手に持って、その重量感を体感した。「僕も、義足だよ」。参加者のひとりである小宮佑都さん(小学6年)が声を上げた。この日は車いすで参加していたが、左脚は、小須田と同様大腿義足、右脚は膝下に義足を装着している。「絶対に、一度走る義足にチャレンジしたらいいよ!」と小須田が応じた。 小須田は自身の義足だけでなく、獲得した世界選手権の金メダルや、2023年のワールドカップ年間総合2位になった時のメダルなども披露した。 「小須田選手は、義足になる前から足は速かったのですか」「スノーボードは、昔からやっていたのですか」。質疑応答になると、大人からも活発に質問が飛び出す。 「昔はプロサッカー選手に憧れてサッカー部に入っていましたが、その中では足が速い方でした」「スノーボードは、せいぜい家族でゲレンデに行っていた程度です」と小須田。むしろ、義足になってから、本気で陸上競技もスノーボードにも取り組んできたのだとか。 特別教室の最後に、小須田は、参加者一人ひとりの目を見つめながら、こう語りかけた。「僕から伝えたいのは、いっぱい失敗しましょう、ということ。いっぱい失敗するということは、それだけいっぱい挑戦している。僕も、数えきれないくらい失敗してきたけど、その中で成功にもつながった。スポーツだけでなく、勉強でもなんでも、全力で目の前のことに取り組みましょう!」。その言葉に、参加者全員が大きくうなずきながら、大きな拍手を送っていた。 車いすバスケ車に試乗体験 陸上競技用のレーサーは大きくて動かすのが大変! 第2部では、小須田も手伝いながら、子どもたちがレーサー、バスケ車を体験。バスケ車には大人も試乗し、白と赤のポールの間を走るスラロームに挑戦した。車いすで参加した小学3年の高橋美月さんは、学校の体験会でも挑戦したことがあったというが、「レーサーは大きくて、動かすのが大変だけどすごく楽しかった!」とか。パラスポーツの中では「ボッチャが大好き。将来は学校の先生になりたい」と、目を輝かせていた。 第3部では、誰もが読みやすい「文字」であるユニバーサルフォントについての特別教室が行われた。アクティビティに参加して、漢字クリアファイルやオリジナルチケットホルダーなどがプレゼントされた。 あいにくの雨にもかかわらず、参加者にとっては小須田の講話を含め、貴重な体験の場になった。参加者は、「次は晴れた日に、外でレーサーに乗りたい」と、次回のアカデミー開催に期待を寄せていた。 文・写真/宮崎恵理
- パラ水泳に期待の新星! 中学1年生になったばかりの山田龍芽(S6)
パラ水泳に期待の新星! 中学1年生になったばかりの山田龍芽(S6)
- 4月10日〜12日に静岡県富士水泳場で開催された「パラ水泳ワールドシリーズ富士・静岡2025」。今大会、18歳以下のユースカテゴリーに日本チームは13名の選手が出場した。その中で、キラリと輝いたのが、中学1年になったばかりの山田龍芽(S6クラス)だ。 自身初めての国際大会に挑んだ山田は、50mバタフライ、200m個人メドレー、400m自由形に出場 2012年7月、神奈川県に生まれた山田は、2歳で悪性リンパ腫を発症し車いす生活となった。抗がん治療を完了させて5歳から水泳をスタート。横浜にある障害者スポーツ文化センター“横浜ラポール”での体験会で初めて車いすを降りて水の中に入った。 「もう、すごく楽しかった! いつもは車いすに座っているけど、プールに入ったら体を思い切り伸ばせる、自由に動ける。それが、楽しかったんです」 水に慣れ、少しずつ泳ぎを覚えるようになるとすぐに競技大会に出場することに。 「幼稚園の年長組の時に、健常者の大会に出場したんです。そうしたら、その時のレースで健常者の子どもを追い抜いて泳いだんですよ」。そう語るのは、母の清香さんだ。 そこから本格的に水泳に取り組みたいと紹介してもらったのが、パラ水泳の名門クラブ「宮前ドルフィン」の稗田律子コーチだ。現在は、1回2時間、週3回のトレーニング時にコーチが横浜ラポールに来て指導する。 小学1年からパラ水泳の日本選手権にも出場しているが、国際大会は今回が初めて。初日の50mバタフライで48秒60、2日目の200m個人メドレーで3分39秒64、3日目にはもっとも得意とする400m自由形で6分00秒62という記録を残した。 「最初の50mバタフライの時は、もう心臓バクバクで緊張はいつもの倍くらいありました。スタートの時には、失格になってはいけないということだけに集中して思い切り飛び込んだらうまくいって、あ、これはオレ、いけんじゃね、って思った。全部のレースで自己ベストが出ました!」と、初めての国際大会での成果を喜んだ。 好記録が出せたことについては、今年1月に今大会出場が決まってから取り組んできたターンの改善が要因と、自己分析している。「コーチからターンがよくなれば、あと2秒はタイムを上げられる、と教えてもらっていました」。とくに400mではターンの質がタイムに直結する。また、レース展開では「体力には自信があります。200mまでの前半から飛ばして、300mで少しだけ休みながら最後の400mでスパートをかける。それもうまくできました」 一方で、400m自由形では6分を切りたかったので、少しだけ悔しさが残る。「育成のコーチから5分45秒を切れば、来年愛知で開催されるアジアパラの特別強化選手に選出される可能性があるということを聞いていたので。今後、そのタイムを早く出して、強化選手の一人に選ばれることが目標です」 普段は、水泳だけでなく車いすテニスやチェアスキーなども楽しむが、競技としては水泳に「全集中!」している。「来年のアジアパラ、その先のパラリンピックに出場したいです!」。今大会出場したユース世代選手たちの未来に、期待したい。 大会期間中、隣接する体育館ではボッチャやビームライフル、手のひらバレーなどのスポーツを楽しめた。山田(右)は応援に来てくれた水泳仲間の村田哲さんと一緒に手のひらバレーに挑戦。2分間で200回ネットを超えるパスを成功させた! 取材・文/宮崎恵理 写真/吉村もと
- NHK「ぐるっとニッポン ぼちぼち旅」に瀬立モニカ(パラカヌー)が出演!
NHK「ぐるっとニッポン ぼちぼち旅」に瀬立モニカ(パラカヌー)が出演!
- NHKで放映されている「ぐるっとニッポン ぼちぼち旅」は、車いすで全国の絶景を巡る新感覚の旅番組。その4月28日(月)~5月2日(金)の回にパラカヌーの瀬立モニカと西明美コーチが出演する。 旅の舞台は鹿児島県。雄大な桜島を一周する。フェリーに乗りデッキで出会った子どもたちと一緒に桜島に上陸。そして、真っ青な海を望む人気の足湯、めったにお目にかかれない雪化粧の桜島、車いすに装着したハンドサイクルで走り抜ける「スーパーマグマロード」、夕陽でオレンジ色に染まる山肌などの絶景をめぐる。 また、桜島大根をふんだんに使ったスペシャルランチ、名物の椿油が隠し味の絶品ちゃんぽん、港で作ってもらったとれたての「うに丼」などグルメも満喫。さらには、大根畑で重さ15キロの大物を収穫したり、小舟で渡った人口わずか2人の小島でアコウの巨木を探検したりと、旅先ならではの冒険も! 放送は15分×全5回。ゆったりのんびりペースで、日本の“美しさ”をじっくり味わう“ぼちぼち旅”で知らなかったニッポンを再発見する。ぜひご覧ください。 【放送予定】 NHK BS 4月28日(月)~5月2日(金) 午前7:45~8:00 NHK BSP4K 4月21日(月)~4月25日(金) 午前7:45~8:00
- 日本で初めて開催された「パラ水泳ワールドシリーズ」
日本で初めて開催された「パラ水泳ワールドシリーズ」
- 4月10日〜12日、静岡県富士水泳場で「パラ水泳ワールドシリーズ富士・静岡2025」が開催された。ワールドシリーズは、世界パラ水泳連盟(WPS)が主催する国際大会のシリーズ戦。今年は、2月のオーストラリアを皮切りに、10月のペルーまで8大会が開催される。パラリンピックや世界選手権出場のための記録が認定されるほか、国際クラス分けも実施され、育成世代の選手の登竜門的な存在でもある。そして、富士・静岡大会は、日本で初めて開催されるワールドシリーズだ。 ワールドシリーズの特徴は、パラリンピックや世界選手権と異なるポイントシステムで競技が行われること。パラリンピック、世界選手権は、選手は属するクラスごとに競技・表彰が行われるが、ポイントシステムでは異なるクラスの選手が同じレースを競い、WPSが定めるポイントシステムの計算式によって順位が決められるというもの。冬季パラスポーツのアルペンスキーやノルディックスキーで採用されている係数システムに相当すると考えれば、わかりやすい。普段は、同じクラスの選手と競い合うが、このシリーズでは異なるクラスの選手と競い合うことになる。日本でのポイントシステムによる競技大会も、今回が初めてだ。 大会は、予選ヒートが行われ、そのタイムから1〜8位がA決勝、9〜16位がB決勝に進出。さらに、U-18の選手によるY(ユース)決勝が実施される。ユースの選手の予選順位がA決勝に入れば、Y決勝ではなくA決勝に進出できる。 パラリンピックとは異なる、ポイントシステムで競技が行われた。パラリンピックでは選手は属するクラスごとに競技・表彰が行われるが、ポイントシステムでは異なるクラスの選手が同じレースを競い、WPSが定めるポイントシステムの計算式によって順位が決められる 山口尚秀が男子100m平泳ぎ(SB14)で世界新記録! 2023年3月に自身が出した1分02秒75の世界記録を2年越しに更新し、1分02秒64で優勝した山口尚秀 「前半、もっと突っ込んでいきたかったのですが、力が出せず、でも、後半にペースを取り戻すことができました」とレースを振り返った山口(中央) ハイライトは、大会初日にいきなり飛び出した。男子100m平泳のA決勝に出場した、SB14クラスの山口尚秀が、1分02秒64で世界新記録を樹立し優勝した。 「決勝前、スタート時刻が遅れてコールルームで長く待たされてしまい、気持ちが落ちたままスタートしました。展開としては、前半、もっと突っ込んでいきたかったのですが、力が出せず、でも、後半にペースを取り戻すことができました」と、語った。これまでの世界記録は山口が2023年3月に、同じ静岡県富士水泳場で出した1分02秒75。2年越しとなる記録更新だった。 男子400m自由形Y決勝で4分18秒16と予選よりも10秒以上もタイムを短縮して優勝した川渕大耀(S9)。今年シンガポールで行われる世界選手権出場の派遣基準記録(21歳以下)を突破して出場権をゲットした 一方、ユース世代の選手の中で活躍が光ったのが、17歳高校生の川渕大耀(S9クラス)だ。昨年、パリパラリンピックに初出場し、S9クラス男子400m自由形で7位に入賞。得意とする同種目が大会最終日の12日に行われた。予選では4分29秒59のタイムで、全体12位のタイムだったが、Y決勝では4分18秒16と、予選よりも10秒以上もタイムを短縮して優勝。今年シンガポールで行われる世界選手権出場のための派遣基準記録(21歳以下)を突破したことで、世界選手権への切符を手にした。 「予選では、決勝のために抑えて泳いだことでタイムを伸ばせず、A決勝に進めなかった。チームメイトのみんなが“一緒にシンガポールに行きたい、行こう!”と応援してくれたことで、最後の最後まで折れずに泳げました」と、喜びを爆発させた。 世界新記録を樹立した山口、21歳以下の派遣記録を突破した川渕のほか、パリパラリンピックで金メダルを獲得し今大会に出場した鈴木孝幸、木村敬一、また、今大会で派遣基準記録を突破した窪田幸太、辻内彩野、石浦智美、西田杏と、田中映伍(21歳以下)が、世界選手権の出場を決めた。 取材・文/宮崎恵理 写真/吉村もと
- 大阪駅直結。うめきた広場で男女のブラインドサッカー国際大会が5月に開催!
大阪駅直結。うめきた広場で男女のブラインドサッカー国際大会が5月に開催!
- 5月18日〜25日、ブラインドサッカーの国際大会『ダイセル ブラインドサッカーウィークinうめきた』が、大阪・グランフロント大阪のうめきた広場で開催される。昨年、男子の同大会がオープンしがばかりのうめきた広場で開催され話題を集めたが、今年は男子だけでなく女子カテゴリーの国際大会も同時開催される。その大事な組み合わせ抽選会が、4月9日に行われた。 今大会の特徴は、IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)公認のハイレベルな国際大会であること。男子カテゴリーは、世界ランキング8位以内の国のみが出場できるエリートカップで、これはIBSAが新設した大会だ。アルゼンチン(1位)、タイ(6位)、コロンビア(8位)、そして日本(3位)が出場する。 一方、今回日本での公式戦として初開催となるワールドグランプリ女子大会には、日本(1位)のほか、イングランド(4位)、アルゼンチン(5位)、オーストラリア(国際大会初出場のためランキングなし)の4カ国が対戦する。 大会は、男女とも総当たりの予選ラウンドを戦い、その結果により1位と4位、2位と3位による準決勝、そして3位決定戦、決勝が行われる。 世界同時配信での抽選の結果、男子の初戦はコロンビア、女子の初戦はアルゼンチンと対戦することが決まった。男子のカードは、昨夏パリパラリンピックの予選ラウンド初戦のカードと同じ。この時には前半にコロンビアに先制され、そのまま敗北を喫した。1年後の今年、新たなチーム編成で、リベンジを図る。 女子は、パラリンピック種目採用を目指しての重要な国際大会の一つになる。アルゼンチンとは、世界選手権のほか、さいたまノーマライゼーションカップなどでこれまでに何度も対戦経験はあるが、IBSA公式戦ということで、両国ともさらに力が入った戦いを見せるはずだ。 男子主将の川村怜は「昨年の同大会は、たくさんの人が足を止めてプレーに応援を送ってくれた。素晴らしい体験でした。個人的にも(出身地である)大阪での開催は、とても嬉しい。ブラインドサッカーの魅力を、プレーで発信したい」と語る。 また、女子主将の若杉遥は「2023年の世界選手権では、決勝でアルゼンチンに1−2で敗れました。今大会はリベンジマッチ、まずは初戦で1勝し、優勝を目指したい」と、意欲を見せた。 大阪・梅田駅前のうめきた広場が、ブラインドサッカー一色に包まれる1週間。ロサンゼルスパラリンピックに向けた日本と、世界のブラインドサッカーの醍醐味を体感してほしい。 大会詳細は、以下、ご参照を。 https://blindfootballweek.b-soccer.jp 文・写真/宮崎恵理
- 大きくバージョンアップして開催された「BOCCIA JAPAN CUP 2025」
大きくバージョンアップして開催された「BOCCIA JAPAN CUP 2025」
- 4月5日~6日、東京体育館でボッチャのインクルーシブ大会である「BOCCIA JAPAN CUP 2025」が開催された。TOKYO CUPからJAPAN CUPに名称が変わり、大きくバージョンアップした大会となった。全国の地区予選を勝ち抜いたチームのほか、日本代表チームの火の玉ジャパンメンバーをはじめとする招待チーム全48チームが集結。5日は12グループに分かれて予選ラウンドが行われ、その結果から16チームが翌6日に決勝トーナメントを戦った。 この大会は、障がいのある人もない人も参加可能で、ボッチャを愛する人がチームを結成して出場できることが大きな特徴。年齢も、性別も、競技歴も関係なく出場でき、テクニックと戦術、戦略を駆使して勝ち進むというまことにインクルーシブな大会である。各チーム3人が出場するチーム戦で、一人2投ずつ全6投で1エンド、予選ラウンドから準決勝までは1試合2エンド、3位決定戦と決勝のみ4エンドで競われる。 今回の目玉は、なんといっても、昨年パリパラリンピックのボッチャ個人種目BC2で金メダルを獲得したタイのワラウット・セーンアンパ選手率いるタイ代表チームが参戦すること。また、東京2020パラリンピックの同種目で金メダルに輝いた杉村英孝選手、パリ大会銅メダルの廣瀬隆喜選手ら、火の玉ジャパンのメンバーもチームRED、BLUEと2組が参戦した。 一方、オリンピックの柔道で活躍したオリンピアンチーム、今年行われるデフリンピックでメダル獲得が期待されるデフバレーボールのスタッフによるチーム、オリンピック、パラリンピックの競泳選手によるオリパラチーム、パラ卓球チームなどもボッチャに挑戦した。 パラ卓球チームも参戦。予選敗退するも、イベントを楽しみ、決勝トーナメントを食い入るように観戦していた 多様性に満ち満ちた48チームの中で、今大会目を引いたのが、新潟カップを勝ち抜いて初出場したチーム「ゆでたまご」。高校2年生の小島惺那選手、1年の咲音選手姉妹と、同じく1年の春日桜佳キャプテンによる高校生チームだ。予選ラウンドでは2勝1敗で決勝トーナメントに進出。準々決勝では火の玉ジャパンBLUE(BC3クラス、BC4クラス)を2−1で下して準決勝へ。その準決勝でタイ代表と対戦し惜しくも0−3で敗れ、3位決定戦でわくわくわらっぴーに3位を献上したものの、キャプテンの春日選手は、今大会のMVPに輝いた。 準決勝でタイ代表チームと対戦したゆでたまご 火の玉ジャパンBLUEとの対戦では、1エンド目にゆでたまごが1−0でリード。2エンド最後にBC3ベテランの有田正行選手がジャックボールの上にボールを乗せて同点とした。セカンドボールの位置を審判が測定し、ゆでたまごに軍配が上がったのだった。会場からは大きな拍手が沸き起こっていた。 もともと、地元・十日町で小学生のスポーツチャンバラを楽しんでいたが、コロナ禍でできなくなり、そこから指導者の福原芳昭氏がボッチャを広めて、週3回の練習を重ねて今大会の出場を果たしたという。 「1カ月くらい前からやっと6ボックス(ボッチャコート)で練習できるようになりました。もっと前からやっていたら、もっといい成績だったかも」(小島・姉) 「ボッチャ始めてすぐに地元の大会とかに出場するようになって、どんどんおもしろくなっていきました」(小島・妹) 「十日町では、すごくボッチャ、人気があります。多分、新潟県で一番ボッチャやっている人が多いと思います」(春日) ちなみに、「ゆでたまご」というチーム名は、ボッチャの大会に出場するようになってチーム名を考えるときに、仲間の一人が「ああ、ゆでたまごが食べたいなあ」と言ったひと言で決まったのだとか。ユニークさではピカイチで、3人とも気に入っている。 「JAPAN CUPは、去年優勝して今年2位になった川崎ボッチャーレとか、すごくかっこいいチーム名ばかり。来年はもしかしたら、チーム名を変更するかも」 来年には、緊張しないように、さらに集中力と体力をつけて、もっと上の成績を目指すと語る。 ゆでたまごの面々。左から小島惺那、春日桜佳、小島咲音の各選手 ゆでたまごのキャプテン・春日桜佳選手は大会MVPに輝いた 優勝したタイ代表チームのセーンアンパ選手は、3年前にも1度、今大会に出場した経験があるが、その時は予選敗退だった。 「タイには、この大会のように健常者と障がい者が一緒に競い合うような大会はありません。日本のボッチャ人気と、レベルの高さにすごく驚いています」 優勝したタイ代表チーム 決勝で惜しくもタイ代表チームに敗れた昨年チャンピオンの川崎ボッチャーレ、キャプテンの鶴井純一朗選手は、「パリパラリンピックの金メダリストと対戦できるのはすごく光栄でした。正直、ものすごく強くて、これまでみたことのない世界を見せてもらいました」と、語った。 2位の川崎ボッチャーレ 3位のわくわくわらっぴー 来年には、誰もが頂点を目指せるボッチャ個人戦の最高峰大会となるBOCCIA GRAND PRIXが開催予定だ。どの選手も今から楽しみにしていると語る。ボッチャは、ますます熱くなる! 文・写真/宮崎恵理